「男性には分からない悩みもある」 女性アイドルを推す“女性ファン”たちの心理とは? K-POPやモー娘。好きに聞いた
2023.7.15 LASISA編集部
女性アイドルを応援しているのは、男性ファンたちだけではありません。女性アイドルに魅了される女性ファンは、どのような思いを抱えているのでしょうか。20~30代の当事者に話を聞きました。
「推し活」の中でもメジャーな「アイドル推し」

若者を中心に熱を帯びる「推し活」。その中でもメジャーな一つが「アイドル」推しです。
矢野経済研究所「『オタク』市場に関する調査」によると、主要分野別の市場規模で最も大きいのは2800億円の「アニメ」。次ぐ2位が「アイドル」で1650億円です(2022年10月発表)。
一般的に、女性はジャニーズ事務所「Snow Man」などの男性アイドルを、男性は「乃木坂46」などの女性アイドルを好きになることが多いと捉えられがちですが、昨今の若い世代には「女性アイドルを推す女性ファン」が増加しています。
LINEリサーチが2022年11月に発表した調査レポートによると、「好きな男性アイドルグループが『特にいない』」と回答した男性は10代で47.6%、20代で52.1%。一方、「好きな女性アイドルグループが『特にいない』」女性は10代で38.7%、20代で45.1%と、女性の方が同性アイドルに魅了される傾向がうかがえます。
「以前は男性アイドルを推していたけど、今は女性アイドルに夢中」という女性ファン二人に、「女性が女性アイドルを推す理由」を尋ねてみました。
「エスパ」にドハマり「自分ができないことを全部彼女たちが」

「一言で言うと憧れです。スタイルも良くて顔もきれいで、ダンスもめちゃめちゃ上手。同世代としてすごく尊敬しています」
そう話すのは、神奈川県内に住む美容師のA子さん(21歳)。韓国の番組を見る中で知った、日中韓の多国籍女性グループ「aespa(エスパ)」のとりこになっていると言います。
以前は「BTS」など韓国発の男性アイドルを追っていたものの、今の“最推し”はエスパ。男性アイドルと女性アイドルは、女性ファンにとってどのような違いがあるのでしょうか?
「私は男性アイドルに疑似恋愛するほどのめり込んでいなかったので『ダンスしている姿がかっこいいなー』という程度だったのですが、女性アイドルは、もう全てが魅力的。モデルをやっているときも、楽曲に併せて変えるメイクも、どの場面の何を見ても気分が上がるし、参考にしたくなる。本当に憧れです」
同世代の同性。自分と近しい属性を持つ女性たちの華々しい活躍に、嫉妬(しっと)のような複雑な感情が芽生えることはないのでしょうか?
「いやー、自分と(彼女たちを)比べるという発想も起こらないですね。『自分もこうなれたらいいな』と思うことはありますけど、とにかく尊敬の思いが強いです」
「でも私、本当は負けず嫌いなんです。学生時代は運動部だったし、絶対負けたくないと思いながらやってきましたから。なのにエスパに対しては、そういう感情は全然湧かないですね。歌もダンスもメイクもスタイルも、自分ができないことを全部彼女たちがやってくれている感じです」
アイドル(idol)という英単語の意味は、神像、または崇拝。A子さんはまさに崇拝するようにエスパをめでている様子。ちなみに“推しメン”は、カリナさんとニンニンさんとのことです。
「モー娘。」に対して抱く「申し訳なさと尊敬と畏怖」の意味は

「『モー娘。』の全盛期、私はちょうど思春期だったので、メジャー過ぎるものや女子っぽ過ぎるものに抵抗感があったんです。流行に乗るのもちょっと、と思って。だからファンになったのはもっと後。10年前くらいからです」
東京都内に住む30代のイラストレーターB子さんは「モーニング娘。」推し。特に好きなメンバーは石田亜佑美さんで、ファンクラブには2014年から加入しています。
B子さんが女性アイドルを好きになるきっかけの一つとなったのは、通っていた女子大学での経験でした。
「同級生たちの多くが、まるで自分の中に“天気”を持っているみたいでした。突然晴れたり、雨が降ったり。いろいろな感情に揺さぶられながら生きている彼女たちの心の機微を間近に見ているうちに、女性を応援したいという気持ちが芽生えていきました」
その気持ちが後に、女性アイドルの応援にもつながっていきました。
B子さんは「女性は、人から見られ、ジャッジされることが多い」と考えます。若い子であれば、なおさら。
「成人にも満たない女の子が、ビジュアルも性格も、行動の一つ一つを見られて批評される『アイドル』というビジネスを肯定していいのか、という葛藤は正直あります。そして、普通の女の子たちが経験できることを経験できないまま思春期を消耗しているのでは、という疑問も持ち続けています。同性だからこそ、その気持ちは強いのかもしれません」
それでもなおアイドルをやるのだという覚悟を決めてステージに立ち続ける彼女たちに対しては「何とも言えない申し訳なさや、尊敬や畏怖の混じり合った気持ちです。毎日いろんなものを投げ打って、全てを賭してここ(ステージ)に立っているんだと思うと『女性戦士』みたいだなと感じます。だからこそ応援したいと思わされるんだろうな、と」
同じ女性だからこそ分かることは、ほかにもあると言います。
思春期特有の調子の悪さや、心身の乱れ。「異性を相手にすることが多い仕事だと理解されづらいことや、男性には分かりにくい悩みもたくさんあるだろうに、自分自身でコントロールして常に笑顔を見せる。その強さに共感するのかもしれません」
かつて男性アイドルに関心を持ったこともあったものの、最後に行きついたのはモー娘。だったと言います。
推しになる理由とは? 心理カウンセラーに聞く

女性が女性アイドルを応援したいと思うとき、そこにはどのような心理があるのでしょうか? 心理カウンセラーの芙和せらさんに聞きました。
芙和さん「女性が女性アイドルを応援する場合、大きく二つのパターンに分かれます」
(1)女性の理想像としての応援
(2)頑張っている女性に対する応援
「(1)の『女性の理想像としての応援』の場合は、自分は推しのようにはなれないけれど、なれるならばなりたい! という憧れの気持ちが強いのが特徴です。アイドルをお手本としてファッション、体形、パーソナリティーに至るまで、取り入れられる部分は取り入れていきます。推しの着ていたブランドを身に着けるなども、それに当たります」
「(2)の『頑張っている女性に対する応援』の場合には、見守るスタンスが特徴で、ファッションをまねるなどはあまりしません。女性としての苦労に共感したり、推しの夢が実現することを願ったりしています。そのためにライブのチケットやグッズを買ったり、SNSのフォロワーになったりするのです」
「どちらのパターンも、女性アイドルに対して女性としてのシンパシーを持っています。体形を維持する大変さ、ホルモンの変調による心身のコントロールなど、自分たちも経験していることだからです。
今後も女性が女性アイドルを推す傾向は続いていくことでしょう。理由の一つは、女性アイドルのグループ化です。グループになることで、アイドルそれぞれの個性が際立ちます。『かわいい』『クール』『エキゾチック』『素朴』……など、自分のイメージを投影するキャラクターを見つけられるのです」
女性アイドルたちの活躍は、女性ファンたちからの応援によっても支えられています。好きなアイドルがいる人は、この夏ライブやイベントへ「推し活」しに行ってみませんか? 女性ファンたちの熱い思いは、きっとアイドルに届いているはずです。
心理カウンセラー歴38年(公認心理師、シニア産業カウンセラー、芸術療法士)。誰もが気軽にカウンセリングを受けられる社会にしたいと考え、花、色彩心理、ハーブなど親しみやすい切り口の心理療法を開発。学術的なエビデンスを得ている。一般社団法人<芙和せら>心理研究所 所長。花と心の学校/ハートステップ・カレッジ 代表。
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