爆発的に流行した「ミルキーペン」現在の姿は? 開発・マーケティング担当者が明かす「ぺんてる」の試行錯誤
2023.10.19 LASISA編集部
平成に一大ブームとなったミルキーペンはいつの間にか販売終了となっていました。なぜ販売終了となったのでしょうか。販売メーカーの「ぺんてる」に直接疑問をぶつけてみました。
平成の一大ブーム「ミルキーペン」の今は?
“ミルキーペン”の愛称を持つ「ハイブリッドミルキー」は、文具メーカー「ぺんてる」が1996年に発売したパステルカラーのボールペンです。
不透明でパステルカラーの色合いのインクが、プリクラや現像した写真の上から書いてもハッキリ文字が読めることで、当時の小学生から女子高生の間で爆発的に流行しました。
ハイブリッドミルキーの販売本数は年間1億本を突破し、平成の一大ブームといっても過言ではありません。
当時小学生だったLASISAスタッフの筆者も、もれなく全色を持っていたミルキーペン愛用者の1人。ミルキーペンで書くための黒いノートやメモ帳も当時は発売されていました。
「ミルキーペンはまだ売ってるのだろうか? 売っていたら、また使ってみたい」。そんな思いで調べたところ、既に販売は終了しているとのこと。2019年に数量限定で復活したものの、その後の再販はなかったそうです。
筆者はあのミルキーペンにはもう出合えないのか……。
さらに調べていくうちに、2022年9月に、ミルキーペンが筆ペンになった「ミルキーブラッシュ」が発売されてることを知りました。
ボールペンではなくなぜ筆ペンに……? 販売メーカーの「ぺんてる」に直接疑問をぶつけてみたところ、同社製品戦略部・桝谷未来さん、萩原美咲さん、高井晴佳さんが答えてくれました。
Q.1996年に発売したハイブリッドミルキーはなぜ販売終了になったのでしょうか?
桝谷さん「ハイブリッドミルキーの発売当時は、ボールペンといえば、黒・赤・青といった単色が主流でした。その中で、ミルクを混ぜたような不透明なパステルカラーゲルインキを採用したのは、業界初のことでした。
ハイブリッドミルキーは暗い色の紙にも描けるので、これまでの“白い紙に書く”というボールペンの常識を覆し、一大ブームになりました。
しかし、発売直後から全国で大ヒットとなったことで、翌年より他社から類似品が発売され、飽きられてしまったことが、販売終了の理由です」
他の文具メーカーからもパステルインクのボールペンが発売し、ハイブリッドミルキーも他社のパステルインキのペンもすべてまとめて“ミルキーペン”と呼ばれていたのが、“ハイブリッドミルキー”失速の要因となったようです。
Q.今後、ハイブリッドミルキーの再販はありますか?
萩原さん「現時点では未定です。市場やお客様の反応を見て、ハイブリッドミルキーの再販やそのマインドを持った新製品の開発を検討したいと考えております」
Q.ハイブリッドミルキーは、2019年に数量限定で復刻発売したということですが、これはどのような試みだったのでしょうか?
桝谷さん「ハイブリッドミルキー復活にあたり、1996年の発売当時のインキから改良を行いました。色はより明るく鮮やかに、さらに下地の色を隠すカバー力も高め、濃い色の紙や写真にもよりはっきりと書くことができる、よりミルキー感の増した新インキを搭載しました。
ハイブリッドミルキーが発売された当時、愛用してくださっていた方々からは、『懐かしい!』という声をたくさんいただきました」
ミルキーペンが“筆ペン”になって復活!
ところで、ぺんてるは、2022年に「ミルキーブラッシュ」というミルキーペンの“筆ペン”バージョンを発売しました。
Q.2022年に発売したミルキーブラッシュは、ボールペンではなく、なぜ筆ペンとして販売したのでしょうか?
桝谷さん「日本では筆と言えば書道を思い浮かべる人が多いかもしれません。海外で筆といえば、書道というより“絵を描く画筆”というイメージを持つ国も多く、もっと自由に、幅広い用途で使われているように感じています。
特に、日本だと筆はきれいな文字を書くためのものというイメージを強く持たれるかもしれませんが、実は、文字だけでなく、絵を描くにも、色を塗るにも最適な道具なのです!
2015年ごろからカリグラフィーやハンドレタリングの流行が世界的に加速し、日本でも定着しつつありますが、今までにないかわいいパステルインキを使うことで、もっと筆の良さを知ってほしい! という思いから筆という形での製品化を選びました」
Q.ミルキーブラッシュの開発で一番苦労したこと、こだわったポイントを教えてください。
桝谷さん「下地の色が透けずにしっかり塗れる『カバー力』を実現するには、染料インキではなく、顔料インキを使う必要があります。しかし、顔料インキに使われる顔料は粒子が大きいため、毛筆タイプのペン先からインキを出すことに苦労しました。
同時に、高いカバー力やなめらかな書き心地も実現しなければならず、乗り越えなければならない課題が多かったのです。
実はこのミルキーブラッシュは、5年以上前から研究を要望していたものの、当時は技術的な部分から実現が難しいとされ、なかなか製品化まで進めることができませんでした。
しかし、2020年に染料とラメ顔料のインキを搭載した筆ペン『デュアルメタリックブラッシュ』が発売され、その技術を応用することで実現の可能性が見え、ついに念願の『ミルキーブラッシュ』を誕生させることができました。
インキの色合いや粘度調整の試行錯誤を重ねた結果、濃い色の紙にもはっきり色が映えるほど高いカバー力でなめらかに書き続けられる、バランスの良いインキを実現いたしました」
ますます、使ってみたくなりました。しかし、筆ペンは少し使うのにはハードルが高い気がします。
Q.ミルキーブラッシュを開発するにあたって、ミルキーペンと同様に小学生〜高校生をターゲットにしたのでしょうか?
桝谷さん「特にターゲットを絞ってはいないのですが、あえて設定するならば20〜40代と幅広い層に使っていただきたいと思っています。
DIYが好きな主婦層やホビークラフトが好きな人はもちろん、女性だけではなく男性、親子、あらゆる世代に、あらゆるシーンで使っていただきたいです。
『きれいな字を書かなきゃ、絵を描かなきゃ』と意識せず、丸やドットなどから気軽に書いてみることから始めていただけたらうれしいです」
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