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高額すぎる“トマト”1個分の栄養を補充するための代替品は? 生のトマトとジュースなどの加工品では栄養に違いがある? 栄養士ライターが解説

2023.10.30 LASISA編集部, 野村ゆき

この夏の猛暑による野菜の発育不良が影響して、トマトの価格が高騰しています。私が暮らす街のスーパーでも1玉250円前後と例年の1.5~2倍近く値上がりしています(10月末時点)。トマト1個分の栄養を他の食材で補えるのか、トマトジュースなどの加工品は生のトマトの代替食材となり得るのか、探ってみたいと思います。

トマトの価格が高騰!食卓を直撃

トマトが高すぎる…トマトが高すぎる…

 この夏の猛暑による野菜の発育不良が影響して、トマトの価格が高騰しています。私が暮らす街のスーパーでも1玉250円前後と例年の1.5~2倍近く値上がりしています(10月末時点)。

 X(旧ツイッター)では、「トマト高いとか言うレベルじゃない」「トマト買いたかったけど高すぎて断念」など、トマトの高騰を嘆くポストが相次いでいます。

 そこで、緊急企画としてトマト1個分の栄養を他の食材で補えるのか、トマトジュースなどの加工品は生のトマトの代替食材となり得るのか、探ってみたいと思います。

真っ赤なトマトはリコピンが豊富な証し

皮の色がピンク系の大玉よりもミディ(中玉)やミニトマトなど、真っ赤なトマトほどリコピンが多め。皮の色がピンク系の大玉よりもミディ(中玉)やミニトマトなど、真っ赤なトマトほどリコピンが多め。

 まずは、トマトの簡単なプロフィールと栄養の特徴を知っておきましょう。トマトはナス科の西洋野菜で、もともとは中南米のアンデス高地が原産。日本に入ってきたのは17世紀ごろとされ、最初は観賞用植物だったとか。昭和に入ってから品種改良が盛んに行われるようになり、市場に広まったと言われています。旬は夏ですが、近年はハウス栽培を中心に年間を通して全国で栽培されています。

 トマトの大きな特徴が、鮮やかでハリのある赤色の果肉。ご存じのようにトマトの赤色は、リコピン(リコペン)によるもの。

 私たちの体内の細胞を傷つけ、がんや動脈硬化などの一因となる活性酸素の働きを抑える強い抗酸化作用があり、疫学調査などからリコピンのがん予防効果が期待されています。

 リコピンは熟すにつれ増加し、完熟トマトに多く含まれています。他にも、体内でビタミンAに変換され免疫力を高めるβ(ベータ)-カロテン、体内の余分な塩分を排出してくれるカリウム、コラーゲン生成に不可欠なビタミンCなども多く含まれています。

トマトジュースなどの加工品にもリコピンが詰まっている

 前置きが長くなりましたが、健康を支える強い味方であるトマトが価格高騰で手が届きにくくなるなんて、まさに食の緊急事態です。

 そんなとき、頼りたいのが、トマトジュースや水煮缶などのトマト加工食品です。

 国の『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』『日本人の食事摂取基準(2020年版)』には、食品に含まれるリコピン含有量、必要量の記載がないため、リコピン含有量が記載されている食品を10月末に実際に購入して比較してみました。

 数値は商品や原料となるトマトの品種や産地、季節によっても変動があることが考えられるため、あくまでも参考例としてください。

 生のトマトの目安量が中玉1個200g(※)なので、単純にリコピンだけを比較すると、ジュースや水煮缶などの加工品も生のトマトに引けを取らないリコピンを含んでいることが分かりました。

 加工品は価格が比較的安定していることも、お財布に優しいメリットと言えそうです。

 また、リコピンは熱に強く、脂溶性で油と一緒に摂取すると吸収率が高まる特徴があるので、寒くなるこれからの季節はシチューや鍋などの温かい料理をトマト風にアレンジして食べるのもおすすめです。

 逆に、加工や加熱によってビタミンCは減ってしまうため、料理の仕上げに少量のフレッシュトマトを加えたり、加熱してもビタミンCが壊れにくいジャガイモを組み合わせたり、ビタミンC豊富な果物をデザートに食べるようにして補いましょう。

 ちなみに、冬が旬の柿にはビタミンCに加え、リコピンも含まれていますよ。

※参照:『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』

トマト以外の食品からも抗酸化パワーは補える

 なお、価格が高騰している期間は割り切って、トマト以外の抗酸化パワーを持つ手に入りやすい食品に切り替えるのも一案です。

 トマトの赤色を象徴するリコピンは「カロテノイド」という色素成分の一つで、カロテノイドは自然界に600種類以上あると言われています。

 オレンジ色が鮮やかなカボチャやニンジンに多く含まれるβーカロテン、黄色の温州みかんに含まれるβークリプトキサンチン、サケやエビなどの赤い色素に含まれるアスタキサンチンも、カロテノイドの一つで、強い抗酸化力があります。

 人間の体内ではカロテノイドをつくり出すことができないため、トマトのリコピンだけにこだわり過ぎず、色とりどりの食品を食べて、抗酸化パワーを取り入れるようにしてくださいね。

※参考文献:杉田浩一ほか監修『新版 日本食品大事典』医歯薬出版株式会社,2017、久保田紀久枝・森光康次郎編『食品学-食品成分と機能性-』東京化学同人,2017、名取貴光監修『新・野菜の便利帳 健康編』高橋書店,2016、板木利隆監修『新・野菜の便利帳 おいしい編』高橋書店,2016

栄養士・編集ライター 野村ゆき

編集ライター歴25年以上。食と栄養への興味が高じて40代で社会人学生となり、栄養士免許と専門フードスペシャリスト(食品流通・サービス)資格を取得。食品・栄養・食文化・食問題に関する情報+好奇心のアンテナをボーダーレスに広げ、分かりやすい記事をモットーに執筆中。

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