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なぜ透明の醤油を開発したのか “醤油を世界へ”九州の老舗メーカーの挑戦

2023.9.22 LASISA編集部

醤油なのに透明。でも、味はちゃんと醤油――。2019年に創業150周年を迎えた老舗醤油メーカー「フンドーダイ」(熊本市)が発売している「透明醤油」に、海外が注目しています。しかし、開発当初は海外に狙いはありませんでした。

老舗醤油メーカーが発売している透明な醤油

フンドーダイの「透明醤油」と「透明醤油でつくった柚子舞うぽん酢」フンドーダイの「透明醤油」と「透明醤油でつくった柚子舞うぽん酢」

 醤油(しょうゆ)なのに透明。でも、味はちゃんと醤油――。

 2019年に創業150周年を迎えた老舗醤油メーカー「フンドーダイ」(熊本市)が発売している「透明醤油」に、海外が注目しているといいます。

 既存の製品を透明化した飲料では、2017年にサントリーが透明な紅茶「PREMIUM MORNING TEA」を、2018年にコカ・コーラが透明なコーラ「コカ・コーラ クリア」を発売しました。色は消えても味は消えていない、その不思議な感覚に多くの人が注目しました。

 日本人にとって醤油といえばおなじみの調味料。その「茶色」、もしくは「黒」の色合いや独特の香りが私たちの味覚や嗅覚を刺激し、食欲を増進させるといえます。

 なぜ透明な醤油を作り、商品化したのでしょうか。

あえて醤油を透明にした理由とは

かっぱ橋にあるアンテナショップ「出町久屋」かっぱ橋にあるアンテナショップ「出町久屋」

 東京西浅草・かっぱ橋にあるフンドーダイが運営するアンテナショップ「出町久屋」で、同社広報の横森和志さんに商品化の意図を聞きました。

Q.透明醤油を開発したきっかけは何でしょうか?

横森さん「透明醤油を開発したきっかけは、ちょうど2019年にわが社が創立150周年を迎えたという背景がありました。

その周年に併せて、醤油の過去、現在、未来とそれぞれのテーマで考えていったときに『未来』への提案として社内技術を見直す中で『透明な醤油』が議題に挙がり、その開発に着手いたしました。

2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界から和食への注目が集まっているなか、日本の伝統調味料『醤油』を透明にすることで、世界中の料理にも醤油の旨味(うまみ)をもっと使っていただくことができるのではないかという発想から誕生しました」

Q.どうやって醤油を透明にするのでしょうか?

横森さん「透明醤油の作り方は、透明醤油用に造った本醸造の濃い口醤油から、さまざまな要素を“引き算”する要領で分解していく、そして分解した要素を必要な分だけ再構成していく手法です。メリットとして、醤油の風味を損なうことなく、大豆の香りや色といった“抜きたい要素”だけを取り除くことができます。

海外客が熱視線! 日本での認知度アップを目指す

透明醤油(フンドーダイ提供画像)透明醤油(フンドーダイ提供画像)

Q.透明醤油の購入層を教えてください。透明醤油以外にどんなラインアップがあるのでしょうか。

横森さん「東京では、この出町久屋以外に、米を中心としたライフスタイルショップ『AKOMEYA TOKYO(アコメヤ・トウキョウ)』の店舗や『北野エース』、『クイーンズ伊勢丹』などで入手できます。

日本での知名度はまだまだなのですが、2023年8月に、インスタグラムで透明料理のレシピを紹介する企画『透明すぎる CLEAR FOOD & SWEETS(クリアフード&スイーツ)』を発信したところ好評をいただきました。

また、同時に出町久屋では、透明レシピで紹介したラーメンやプリンの試食サービスを行いました。『インスタを見た』といって来店する方もいらっしゃったり、SNSのフォロワーも徐々に増えてきたりしているので、注目度の高まりを感じています。

海外には、25カ国に輸出しています。特にヨーロッパではドイツ、アジアではシンガポールからの注文が多いです。

透明醤油が海外で人気になったきっかけは、イタリアンやフレンチのシェフに注目していただいたことです。

醤油だとどうしても料理が黒っぽくなりがちだったり、西洋料理では単なる和風になりがちだったりするのですが、透明醤油だと食材の色を生かした料理ができるので、旨味の隠し味としてお使いいただける点や醤油の風味をつけながら見た目が良いという点などが選ばれている理由です。

店舗には、かっぱ橋に観光に来た外国人の方がふらっと立ち寄って購入されることが多いです。料理道具を扱う店が多い場所なので、元々食器や食材に興味があるのでしょう。別の店で包丁を買った後、お土産に透明醤油を何本も買って帰る人が多いです。先ほども、フランス、フィンランド、イギリスのお客さんが立て続けに来店しました。

ほかにも『透明醤油でつくったトリュフ醤油』、『透明醤油でつくった柚子舞うぽん酢』などの複数の透明シリーズを置いていますが、透明でない九州醤油のラインアップもあります。実際に試食してみて、複数種類を購入していく外国の人も多いです」

Q.インスタグラムで「透明醤油」のレシピを公開した理由を教えてください!

横森さん「透明レシピ公開の意図は、フンドーダイの醤油をきっかけに熊本県の魅力を多くの人に知ってもらうためです。透明というのは夏にピッタリな涼しいイメージがあるということ、透明感を追求した料理が“映える”のでは、ということで同社の商品開発がレシピを開発し、インスタグラムで公開しました」

Q.透明すぎるため、醤油を入れすぎてしまう心配もありますが、何か対策はありますか?
 
横森さん「透明醤油は本当に透明なので目視ではどのくらいの量をかけたかわかりにくいでしょう。きちんと計量して使っていただくことをおすすめします(笑)」

 横森さんは「ぜひ、手に取っていただき、透明レシピを実際に作っていただきたいです。私は、特に、ラーメンのレシピが一番おすすめです! 今後も、透明醤油を使った透明レシピの開発を検討していますので、SNSをチェックしてほしいです。さらに、透明醤油をきっかけに九州醤油のおいしさも海外だけでなく国内の人にも知ってほしいです」と太鼓判を押します。

 透明醤油が日本で大ブームを巻き起こす日も近いかもしれません。

透明醤油レシピサイト:https://www.fundodai.jp/clear-recipes8/

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