【ナス】“夏“と”秋”でどんな味の違いがある?アク抜きは時間に注意点!? 栄養士ライターが解説
2024.9.30 野村ゆき
夏野菜のイメージがあるナスですが、「秋ナス」という言葉もよく耳にします。夏と秋でナスに違いがあるのでしょうか。
夏?秋?どっちのナスがおいしいの?
夏野菜のイメージがあるナスですが、「秋ナス」という言葉もよく耳にします。有名なことわざ「秋ナスは嫁に食わすな」には、ナスを食べると体を冷やすことからお嫁さんを気遣っているという説のほか、秋においしくなるナスをお嫁さんに食べさせるのはもったいないという説など、複数の解釈があります。その真意はさておき、果たして、夏と秋でナスに違いがあるのでしょうか。
夏のナスは煮崩れしにくく・秋ナスはやわらかく甘みが強め
現在はハウス栽培を含めて一年中、出回っているナスですが、もとはインド原産で暑さに強く、本来の旬は初夏から秋にかけて。夏のナスは、暑い時期に強い日差しをたくさん浴びて育つため、皮が少し厚くなる傾向があります。果肉も詰まっていて煮崩れしにくく、ラタトゥイユやカレーなどの煮込み料理に使うと形よく仕上がりやすいです。
一方、晩夏から秋に出回る秋ナスは気温や日差しがやわらいだ環境で育つため、甘みやうまみが増すと言われています。皮と果肉がやわらかくなり、炒め料理に使うと火が通りやすく、麻婆ナスやみそ炒めなどが手早く仕上がります。ナス本来の味を生かす焼きナス、焼き浸し、田楽、天ぷらにもおすすめです。
中長ナス、長ナス、大長ナス、丸ナス、米ナスなど、地域によって多彩な品種が栽培されていて、ナスの品種によっても果肉のやわらかさ、食感や味の個性が異なるため、参考としていただけたら幸いです。
ナスの皮に含まれる“ナスニン”に注目!
冒頭のことわざ「秋ナスは嫁に食わすな」の解釈の一説である、「ナスを食べると体を冷やす」というのは一理あります。ナスは成分の90%以上が水分で、利尿作用のあるカリウムが比較的多いことから、体にたまった熱を逃す効果が期待できます。
また、ナス特有の濃い紫紺色をした皮には、ポリフェノールの一種でアントシアニン系の色素「ナスニン」が含まれ、コレステロールの吸収を抑え、老化や生活習慣病を招く活性酸素から体を守ってくれる働きなどが注目されています(白ナスなど皮が紫色ではない品種を除く)。皮をむかなくてOKな料理なら、なるべく皮を残して料理しましょう。皮に包丁で隠し包丁を入れると、皮を活かしながら火の通りがよくなって味も染み込みやすくなります。
栄養成分を逃したくないなら長時間のアク抜きは禁物
ナスはアクが強く、切った後に水にさらす「アク抜き」をしないと、切り口が褐色に変わり、えぐみを生じます。実は、このアクの正体はクロロゲン酸などのポリフェノール。こちらもナスニン同様に活性酸素を抑える強い抗酸化作用があります。カリウムもポリフェノールのクロロゲン酸とナスニンも水に溶けやすい性質があるため、長時間、水にさらしすぎると、栄養成分まで溶け出してしまうことに。水にさらす時間は10分程度までを目安にしましょう。切ってすぐに調理する場合はアク抜きしなくても大丈夫です。
※参考文献:杉田浩一ほか監修『新版 日本食品大事典』医歯薬出版株式会社,2017、久保田紀久枝・森光康次郎編『食品学-食品成分と機能性- 第2版』東京化学同人,2021、池上文雄ほか監修『からだのための食材大全』NHK出版,2019、名取貴光監修『新・野菜の便利帳 健康編』高橋書店,2016、板木利隆監修『新・野菜の便利帳 おいしい編』高橋書店,2016、白島早奈英・板木利隆監修『もっとからだにおいしい野菜の便利帳』高橋書店,2009、レジア編『日本の食材図鑑』新星出版社,2018
編集ライター歴25年以上。食と栄養への興味が高じて40代で社会人学生となり、栄養士免許と専門フードスペシャリスト(食品流通・サービス)資格を取得。食品・栄養・食文化・食問題に関する情報+好奇心のアンテナをボーダーレスに広げ、分かりやすい記事をモットーに執筆中。
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