知ってる?【土用しじみ】ウナギよりも経済的かも! 夏バテ予防にもっと食べたい「しじみ」 肝臓に良いってホント?栄養は?栄養士ライターが解説
2024.8.5 野村ゆき
夏の暑い時期にいただく滋養強壮メニューとして「土用ウナギ」を食べる習慣はよく知られています。実は、それよりも古くから「土用シジミ」として食べられてきたと言われるのがシジミです。今回はシジミの栄養をクローズアップしたいと思います。
「土用ウナギ」より古い?「土用シジミ」って知ってる?
夏の暑い時期にいただく滋養強壮メニューとして「土用ウナギ」を食べる習慣は、江戸時代から始まったとか。実は、それよりも古くから「土用シジミ」として食べられてきたと言われるのがシジミです。「土用のシジミは服薬」とも言われるほど、小さな貝の身に栄養が詰まっています。ウナギと比べて頻繁に食べやすい価格帯も魅力的。そんなシジミの栄養をクローズアップしたいと思います。
夏の「土用シジミ」はおいしい!
シジミは輸入ものも含めると通年出回っていますが、とりわけ夏の「土用シジミ」と冬の「寒シジミ」がおいしいと言われています。
特筆して多い栄養成分が、ビタミンB12。葉酸と協働して赤血球をつくり貧血を予防することから別名「造血ビタミン」と呼ばれ、傷ついた神経細胞を修復する働きもあります。シジミ10個分のむき身(10g)に8.2μg(マイクログラム)含まれ、12歳以上の男女が1日に必要な推奨量(2.4μg)を十分に補うことができます(※1)。ビタミンB12は野菜などの植物性食品にはほぼ含まれていないため、動物性食品から意識して摂ることが大切な栄養素です。
また、よく似た貝類のアサリと比較すると、シジミには約3.6倍のカルシウム、約4倍の鉄、約2倍の亜鉛、約8倍の銅が含まれるなど、ミネラル豊富な点も大きな特長です(※2)。カルシウムは骨の健康に不可欠で、鉄と銅は不足すると貧血を招きやすく疲労感や息切れにつながります。シジミに含まれる鉄は動物性のヘム鉄で、鉄分の吸収が良い特徴もあります。
(※1)シジミの目安量:奥嶋佐知子監修『食品の栄養とカロリー事典 第3版』女子栄養出版部、推奨量:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020年版)』より
(※2)参照:『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年版』より/しじみ 生・あさり 生 共に可食部100gあたりの栄養価を比較した場合
シジミは肝臓にいいってホント?
「二日酔いにはシジミ汁」とよく聞くのは、シジミに含まれるオルニチンの働きに由来すると考えられます。オルニチンには肝臓の中で有害なアンモニアを体外に排出する仕組みを助けたり、成長ホルモンの分泌を促したりする働きがあります。さらに、シジミに含まれるメチオニン、タウリンも肝機能を高め、疲労回復に役立つと言われています。できれば、二日酔いになる手間に、お酒と一緒にシジミ汁やシジミ料理をいただくのが効果的と言えそうです。
砂抜きは塩水?真水?
日本で食用として主に出回っているのは、海水と淡水が混じり合っている汽水(きすい)域で採れるヤマトシジミです。砂出しは、真水か海水どちらでするのが正解か迷う人も多いかもしれませんね。
おすすめは、1%程度の濃度(水600ccに小さじ1程度)の食塩水です。真水で砂出しをすると浸透圧の関係で、シジミのうまみ味成分であるコハク酸やグルタミン酸が半減してしまいます。また、冷凍すると生のシジミよりもオルニチンとうまみ成分がアップすると言われていますので、ご参考まで。
※参考文献:杉田浩一ほか監修『新版 日本食品大事典』医歯薬出版株式会社,2017、藤原昌高著『からだにおいしい 魚の便利帳』高橋書店,2010、池上文雄ほか監修『からだのための食材大全』NHK出版,2019、上西一弘ほか監修『健やかな毎日のための栄養大全』NHK出版,2022、レジア編『日本の食材図鑑』新星出版社,2018、沼津りえ著『食材保存大全』主婦の友社,2022
【画像】塩水?真水? シジミの砂抜き方法&保存方法をチェックする(5枚)
編集ライター歴25年以上。食と栄養への興味が高じて40代で社会人学生となり、栄養士免許と専門フードスペシャリスト(食品流通・サービス)資格を取得。食品・栄養・食文化・食問題に関する情報+好奇心のアンテナをボーダーレスに広げ、分かりやすい記事をモットーに執筆中。
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