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【パリ五輪】体操レジェンド・内村航平氏の“独特コメント”「おなかいっぱい」に共感した?違和感を感じた?《受け取り方の違い》が起こるワケを心理カウンセラーが解説

2024.8.4 佐藤城人(さとう・しろと)

体操男子総合決勝を見終えた体操・元チャンピオンの内村航平さんの「おなかいっぱい」という発言に注目が集まっています。内村さんの「おなかいっぱい」という表現に対し、なぜ共感する人と違和感を持つ人がいるのでしょうか。心理カウンセラーの立場から解説します。

はじめに

競技だけでなく“解説”にも注目競技だけでなく“解説”にも注目

 オリンピックの競技を観戦する際の楽しみの一つ、それが解説の言葉です。まったく知らない競技をわかりやすく説明したり、選手の立場から状況をひも解いてくれたり、解説の仕方次第で、楽しみも変ってきます。 7月29日、体操元チャンピオンの内村航平さんが「おなかいっぱい」と表現しました。体操男子団体総合決勝を見届けた後の発言です。SNSでは「内村航平さん面白すぎる!!」「私もおなかいっぱい!」など内村さんの言葉選びのユーモアやセンスに共感する声が多数あげられていました。

 実は、個人的には「この(内村さんの)言葉、独特な言い回しだな」と感じたのです。「おなかいっぱい」とは、食べ物を食べて満足した時、つまり生理的欲求の満足度を表す言葉だからです。内村さんの場合、「満たされた」という表現で「おなかいっぱい」を用いたのでしょう。この他にも、スケートボードでは瀬尻稜プロのチョイスする言葉(例えば「ビッタビタ」「はんぱねぇ」など)は、独特な言い回しです。これらの言い回しはなんとなく理解できるような曖昧な表現に思えるのです。

 このように、すんなり受け入れられる人もいれば、私のように少し違和感を持つ人もいるのも事実……。なぜこのような受け取り方の違いが出るのでしょうか。私たち人間の持つ五感から考えてみました。この違いがわかると、対人関係におけるモヤモヤが減り、コミュニケーションも随分と楽になります。

なぜ受け取り方に違いが出るのか

「VAK」から紐解く「VAK」から紐解く

 カウンセリングやコーチングではよく、NLPが用いられます。このNLPの基本的な理論の一つ、それがVAKです。ではまず、このVAKについて考えていきましょう。

 私たちには五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)があります。そして、この五感から得た情報を言語化させます。例えば、あなたは新聞を「見た」と言いますか? それとも「読んだ」と言いますか?

 目からの情報を優先的に活用する場合は「見た」となり、耳の聴覚を優先する場合は「読んだ」となります。このように、私たちは五感をまんべんなく用いるのではなく、どれかを優先的に用いていることがわかります。なお、どれを優先させるのかは、生まれつきの部分もありますし、経験から習得する部分もあります。従って、ケースバイケースで使い分けることも十分に可能です。

 では、ここで2つ質問です。

(1)「真夏の海」という言葉があります。この言葉から、今あなたが連想したものは、次のどれですか?近いものをお選びください。

ア:青い海や白い空などイラストや絵画をイメージした。
イ:サブ~ンという波の音や家族連れの歓声など、音が聞こえた。
ウ:ダラダラ流れる汗、足の裏のジリジリする感覚、磯の香りなどを感じた。

(2)「カミナリ」という言葉があります。この言葉から、今あなたが連想したものは、次のどれですか?近いものをお選びください。

ア:ピカッと光る稲妻
イ:ガラガラ、ドッシーンという音
ウ:怖い・鳥肌が立つ感覚

VAKの3タイプの特徴

 VAKとは、五感をさらに3つにまとめたものです。VAKのVは視角(Visual)の頭文字のVです。Aは聴覚(Auditory)、そしてKは身体感覚(Kinesthetic)のKです。この3つからVAKと呼ばれます。身体感覚とは、味覚と嗅覚・触覚をひとつにまとめたものです。

 では、この3つ、それぞれの特徴をみていきましょう。

【Vタイプ】視覚優位型

 視覚を優先させるタイプです。従って、「見る・見られる」感覚を重視します。話す速度は速いです。目からの情報を瞬時に言葉に変換できるからです。そのため、失言も多くなり注意が必要です。この他、目の前にあたかも品物が存在(見えている感じ)するかのように説明をします。頻繁に手を動かしながらの説明となります。実際には、野菜や包丁が無いにもかかわらず、包丁で野菜を切る仕草をするエアクッキングが良い例です。

【Aタイプ】聴覚優位型

 聴覚を優先させるタイプです。従って、「読む・聞く」感覚を重視します。話す速度は3つの中でノーマルです。文章を書く際、息継ぎのための読点(、)を意識して打つのはこのタイプです。黙読をする際も、頭の中では音読をしているからです。そのため、速読が苦手です。この他、会話をする際、耳に意識を集中させるため、半身になり相手に耳を寄せることがあります。この場合「ちゃんと目を見て話しんさい」と注意をされることもあります。 ※読点を打つ際、Vタイプは「見た目」で打ちます。ここに空間(すき間)がないと見づらいと感じる箇所に読点を打ちがちです。また、速読が得意なのは、ページや文字を画像として捉えるVタイプです。

【Kタイプ】味覚・嗅覚・触覚優位型

 味覚・嗅覚・触覚を優先させるタイプです。従って「自分の身体の反応」を重視します。外部から入る刺激(映像や音・味・匂いなど)を、いったん自分の身体に落とし込んでから反応します。そのため、話す速度もゆっくりとなり、返事もワンテンポ遅れてしまうことがあります。身体の感覚を確認するため、自然と身体に触れることが多くなり、その際に感じたことを言語化します。このため、発する言葉は、その人特有の感覚的な表現となります。 ※身体が感じたままを素直に表現するため、周囲からは「ユニーク」「天然」と呼ばれる場合があります。

 いかがでしたか?

 VAKのタイプは、血液型のように厳密に分類できるものではありません。誰しも、3つを持ち合わせていますので、どれを優先的に用いるのか、という観点から判断してください。また、どのタイプが良いというものでもありません。では、ここで「真夏の海」と「カミナリ」の答え合わせです。

質問から分かるVAKタイプ

心理カウンセラー・心理セラピスト 佐藤城人(さとう・しろと)

心理カウンセラー・心理セラピスト。過去にアルコール依存症を患った経験があり、それを克服する過程で40代に再度大学に入学、心理学と出会う。各種依存症やインナーチャイルドを抱える方、さらには社交不安障害や愛着障害の悩みなど、これまで10年間で約5000名様の悩みをサポート。インナーチャイルドの回復プログラムの中で「正しさよりも心地よい生き方」を提唱する。2019(令和元)年一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会を設立。現在はカウンセラー・セラピストの養成にも力を入れている。

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