「ストレス解消するため」喫煙・飲酒で五輪代表辞退に発展… 《緊急提言》そもそも喫煙は“ストレス解消”になるのか?心理カウンセラーが解説
2024.7.24 佐藤城人(さとう・しろと)
先日、体操の女性代表選手が来るオリンピックの代表辞退を辞退する騒動がありました。理由は19歳という未成年で発覚した喫煙と飲酒行為。今回は、喫煙とストレス、さらに依存との関係について述べてみようと思います。
喫煙と飲酒で、未成年アスリートが代表辞退に
7月26日から8月11日までフランスで開催される「パリ2024オリンピック」。応援するスポーツ、選手たちの活躍を心待ちにしている人も多いのではないでしょうか。ただ、先日、体操女子・宮田笙子選手が代表を辞退しました。理由は19歳という未成年で発覚した喫煙と飲酒行為。代表行動規範違反になります。
今回の記事は、この問題の是非を論じることが目的ではありません。あくまでも、宮田さんの「ストレスを解消するための行為だった」という発言に注目し、喫煙とストレス、さらに依存との関係について述べてみようと思います。 ※この記事は2024年07月22日の段階で判明している事実を元に書いています。
タバコや酒によるストレス解消の本当の意味
日常生活において、私たちはさまざまなストレスにさらされます。オリンピック代表ともなれば、かなりの重圧と想像できます。そのストレスを発散するためにタバコや酒に手が出た、これが今回の事態の発端です。
7月19日の日本体操協会の会見では、宮田さんが飲酒と喫煙は「一度だけ」だと説明したことも明かされました。しかし、「ストレスを解消するための行為だった」という発言からは、常習的ではないにしても、今回が初回ではないということがうかがえます。
これまでに、タバコを吸った経験のある方は、初めて喫煙をした場面を思い出してください、「あぁ~なんて気持ちがいいんだ。リラックスできたよ」と感じましたか? ほとんどの方は、気持ちが悪くなる体験をしているはずです。これを何回か繰り返すことにより、気持ちよさを実感できるようになります。これはお酒も同じです。そして、喫煙者や飲酒者はこの「気持ちよさ」をストレス解消と思い込んでしまいます。もちろん、代表としての重圧も推測できます。ただ、喫煙が常態化すると、タバコが吸えないゆえのストレスも加わること、これは押さえておきたいポイントです。
非喫煙者は「タバコが吸えないからイライラする」とは言いません。では、ここで質問です。「そもそも、そのイライラは、どこから生じるのでしょう?」答えはタバコです。タバコが切れることによって生じるニコチン切れ、これがイライラの正体です。つまり、喫煙とは、タバコが生み出すストレスを、喫煙によって解消する行為と言えます。【図1】のAとBをご覧ください。これは、タバコとそこから生じるストレスの関係を図で表したものです。
図1Aは「タバコを吸うとスッキリする。リラックスできる」という誤解を表しています。黄色い矢印が示すように、あたかもやる気が出てプラスの状態が増えたように錯覚をします。しかし、本当は図1Bです。赤い矢印はニコチンが切れた状態です。イライラというマイナスの状態に陥ります。そこに喫煙をすることにより、ニコチンが注入され、元の状態に戻ることができます。これが黄色の矢印です。Aの黄色の矢印もBも、上向きになる点では同じです。しかし、Bの場合は、元の状態に戻るだけで、決してプラスに導くことではありません。
ゼロ地点とマイナス圏を何度も何度も行き来する人は、知らぬ間にニコチン依存に陥ってしまうことでしょう。ニコチン依存やアルコール依存など、依存症者の多くは「苦しみから解放されたかった」と発言します。「喜びではなく、苦痛を回避するための行為」まさに図1Bを端的に言い表した言葉です。繰り返しても、決してプラス圏にはなりません。そして、何度も繰り返すうちに依存症になっていきます。
周囲の視線に対抗するには?
ここまで、タバコが吸えないことから生じるストレスについて考えてきました。この他、周囲の視線を感じるときにストレスがかかります。そもそもストレスとは、外部から受け取るものだからです。では、図2(1)と(2)をご覧ください。
(1)も(2)も外部からのストレス(青い矢印)を受けている点では同じです。ただし、(1)の赤い矢印は、外部から内側へと向かっています。具体的には、ニコチンやアルコールなどの物質を体内に注入している姿です。これで、青い矢印から受け取るストレスを軽減できるでしょうか?ますます、ストレスが増えてしまいます。本来、求められるのは、(2)の姿です。つまり、自分の中から沸き起こるエネルギーこそが、外部からのストレスに対抗できるのです。そして、内部から沸き起こるエネルギーとは意欲、目的に向かう情熱(パッション)です。
今回の件であれば、青い矢印は「代表や日の丸を背負う重圧」などでしょうか。そして、(2)の赤い矢印とは、シンプルに「オリンピックに出られる喜びや楽しみ」にフォーカスすることです。原点に立ち返り「スポーツに打ち込める喜び」でもいいでしょう。これらを意識していれば、自分の内部の情熱に再び点火できたのではないでしょうか?
心理カウンセラー・心理セラピスト 佐藤城人(さとう・しろと)
心理カウンセラー・心理セラピスト。過去にアルコール依存症を患った経験があり、それを克服する過程で40代に再度大学に入学、心理学と出会う。各種依存症やインナーチャイルドを抱える方、さらには社交不安障害や愛着障害の悩みなど、これまで10年間で約5000名様の悩みをサポート。インナーチャイルドの回復プログラムの中で「正しさよりも心地よい生き方」を提唱する。2019(令和元)年一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会を設立。現在はカウンセラー・セラピストの養成にも力を入れている。
recommend
こちらもおすすめ