【新玉ねぎ】普通の玉ねぎの違いは?甘みと辛みの差があるのはなぜ? 栄養成分の違いやおすすめの食べ方まで栄養士ライターが解説
2024.5.29 野村ゆき
味の違いは、貯蔵期間が甘み・辛みの違いに影響

新玉ねぎは甘く、普通の玉ねぎは辛いという印象を持っている人も多いのではないでしょうか。この違いはどうして生じるのでしょう。玉ねぎの甘み成分はブドウ糖や果糖などの糖質で、その含有量はトマトやイチゴよりも多いことが分かっています(※1)。
(※1)『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』にて、たまねぎ(りん茎・生)、赤色トマト(生)、いちご(生)の可食部100gに含まれる栄養成分を比較した場合
玉ねぎは本来とても甘みの強い野菜なのです。一方、辛み成分は主に硫化アリルによるもの。実は、収穫後すぐに出荷される新玉ねぎは水分が多い特徴があり、水分によって辛み成分が弱まり、甘みを感じやすいと考えられています。逆に、普通の玉ねぎは乾燥させる過程で水分が抜けて辛みを強く感じやすくなります。普通の玉ねぎを刻んでじっくり炒める“アメ色玉ねぎ”が甘く感じるのは、辛み成分が揮発し、たまねぎ本来の甘み成分が引き立つためです。
つまり、新玉ねぎと普通の玉ねぎで、含まれる栄養成分が異なるのではなく、甘み成分と辛み成分のバランスが異なり、水分が多く本来の甘みを感じやすいのが収穫直後の新玉ねぎ、乾燥させて辛みを際立たせたのが普通の玉ねぎということになります。
硫化アリルの抗酸化作用は生食で発揮される

玉ねぎに含まれる硫化アリルは、体内でアリシンに変化し、糖質をエネルギーに変えるビタミンB1の吸収を助け、疲労回復効果を持続させる働きがあります。また、強い抗菌作用や抗酸化作用のほか、血栓予防や消化促進作用が期待されている注目の機能性成分でもあります。
硫化アリルは、水に溶けやすく熱に弱い性質があります。玉ねぎを水にさらすと辛みは抜けやすくなりますが、さらしすぎると、せっかくの機能性が消失してしまいます。辛味が控えめな新たまねぎは、効果が発揮されやすい生食がおすすめ。逆に、普通の玉ねぎのように煮込んでも甘みや味の深みが出にくいため、加熱するときは短時間でサッと炒める方がおいしくいただけます。
続編では、新玉ねぎのレパートリーが広がる「新たまねぎマリネ」の作り方と活用例をご紹介します。
※参考文献:杉田浩一ほか監修『新版 日本食品大事典』医歯薬出版株式会社,2017、名取貴光監修『新・野菜の便利帳 健康編』高橋書店,2016、板木利隆監修『新・野菜の便利帳 おいしい編』高橋書店,2016、白島早奈英・板木利隆監修『もっとからだにおいしい野菜の便利帳』高橋書店,2009、上西一弘ほか監修『健やかな毎日のための栄養大全』NHK出版,2022、池上文雄ほか監修『からだのための食材大全』NHK出版,2019、主婦の友社編『名前がわかる!フルーツ&ベジタブル図鑑』主婦の友社,2018、レジア編『日本の食材図鑑』新星出版社,2018
編集ライター歴25年以上。食と栄養への興味が高じて40代で社会人学生となり、栄養士免許と専門フードスペシャリスト(食品流通・サービス)資格を取得。食品・栄養・食文化・食問題に関する情報+好奇心のアンテナをボーダーレスに広げ、分かりやすい記事をモットーに執筆中。
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