《幸福度》ワースト3位の日本人は果たして“不幸”なのか?不運を幸福に変えるシンプル思考術 心理カウンセラーが解説
2024.5.23 佐藤城人(さとう・しろと)
2024年5月中旬に「幸福感調査レポート」が公開されました。調査レポートの中で特に気になったのが、「自分の人生をコントロールできる感覚」という項目です。どの程度満足しているかという質問に対して、「満足している」と回答したのは45%で、日本は30カ国中最下位でした。なぜ日本人は最下位だったのでしょうか?改善策を解説します。
はじめに
2024年5月中旬に、世論調査会社のイプソスによる「幸福感調査レポート」が発表されました。それによると、「幸せ」と感じている日本人の割合は、対象国30カ国の中で下から3番目で、総体的に低いという結果でした。
低くなる要因として、国全体の経済事情など、いろいろと挙げることができると思います。今回の調査レポートの中で特に気になったのが、「自分の人生をコントロールできる感覚」です。どの程度満足しているかという質問に対して、「満足している」と回答したのは45%で、30カ国中最下位でした。確かに、人生は思うに任せぬものです。しかしこの問いは、「コントロールできる感覚が持てるかどうか」です。感覚的なものであるのならば個人のレベルで改善ができそうです。心理カウンセラーの立場で、改善策を解説しましょう。
人生をコントロールする《感覚》を持つには?
ポイントは次の3点です。
(1)幸運と幸福を区別すること
(2)主体的な生き方をすること
(3)すべてはコントロールできない
(1)幸運と幸福を区別する
あなたが宝くじに当たった場面をイメージしてください。これは幸運でしょうか、それとも幸福でしょうか? これは、幸運ですね。では、宝くじに当たった場合、すべての人が幸福になれるのでしょうか?この答えはNOです。当選者の数年後を追跡して調べると、不幸な人生を送っている人もいるからです。
ここで区別をしたいのは、幸運と幸福は異なるということです。この2つの違いは、次のように考えることができます。
「幸運」:外的な要因や、偶然に左右されがちなもの。
「幸福」:外的要因に左右されず、自分で感じるもの。
これは、不運と不幸にも通じるものです。自分の人生をコントロールできる感覚が持てない人の中には、この幸運と幸福を混同している人も多いのではないでしょうか? 例えば、宝くじに当たることは幸運です。しかし、そのお金の使い道を間違えると不幸になります。天気予報が外れ、旅先で雨に濡れること、これは不運です。しかし、それでも、雨模様の中に素敵な景色を見出すことができるとすれば、これは幸福です。
このように「運」はなかなかコントロールできません。しかし、それを「福」に変えることは十分に可能です。ではどうすれば、不運を幸福に変えることができるのでしょう?
嫌だなと思う不運な出来事に遭遇した場合、多くの人は「そのせいで」と言います。しかし、その場面で「そのおかげで」と呟いてみてください。
・「そのせいで」と続けると、そのまま不運が不幸になってしまいます。
・「そのおかげで」と続けると、幸福に切り替えることもできそうです。
人生は「塞翁が馬」とも言います。そして、この2つの言葉のどちらを選ぶのか、これは本人がコントロールできるのではないでしょうか。
(2)主体的な生き方を選ぶ
ポイントの2点目は、主体的に生きている人と、受身的に生きている人の違いです。
主体的な人:人生をコントロールできている感覚が持てる
受身的な人:人生をコントロールできている感覚が持てない
受身的な生き方の場合、自分の言いたいことが言えません。さらに、自分のやりたいことができません。これらの状況をコントロールできているとは言えませんね。では、ストレスの面から考えてみましょう。主体的に生きている人と受身的な人。どちらもストレスは抱えます。では、乗り越えやすいのは、どちらのストレスでしょう?
答えは、主体的な人のストレスです。一般的にストレスというと、良くないものと捉えられます。しかし、ストレスの原義は「外からの圧力により歪みが生じた状態」であり、ストレスそのものには善し悪しはありません。
主体的に自分から取り組む人の場合は、乗り越えやすいストレスです。なぜかというと、自分で積極的に関わっていくからです。もちろん、失敗もあります。しかし、トライ&エラー、試行錯誤を繰り返しながら、最終的には乗り越えるところまで到達します。たとえ成功や栄光を手にすることができなかったとしても、よき経験・よき糧とすることができるのです。
一方、受身的な場合、乗り越えることが難しくなります。相手に合わせる生き方は、相手次第となり、自分ではコントロールしにくくなるからです。
このように考えてみると、「コントロールできている感覚」を持つためには、主体的な生き方が大事ということがわかります。では、どのようにすれば良いのでしょう?
「私は」と呟いてください。これだけでOKです。
・「私は」と自分を主語にすると、自分が主体となります。
・「あの人は」のように他者を主語にすると、受身となります。
補足です。たとえ「私は」を主語にしたとしても、「私は××された」のように、受身の言い方では主体的になりません。あくまでも「私は〇〇をした」と能動的な表現を心がけてください。
(3)すべてはコントロールできない
ここまでお伝えしたポイントは、
(1)幸運と幸福を分けること
(2)主体的な生き方を選ぶこと
この2点です。ここで再度、冒頭を思い出してください。「コントロールできるか、できないか」ではなく、「コントロールできる感覚が持てるか、持てないか」この違いが大事と述べました。この(1)と(2)は、あくまでも、コントロールできる感覚を持つことが目的です。コントロールするための方法ではありません。
自分で何でもコントロールできると思い込んでしまうと、これはこれで大きな悲劇を生むことになります。なぜならば、人間は全知全能ではないからです。このように「自分の身の丈を知る」ことも、幸福に至る道の一つです。
さいごに
「美しい景色を探すな。景色の中に美しいものを見つけるんだ」
画家・ゴッホの言葉です。幸福も同じではないでしょうか?「幸せを探すな。日々の生活の中に幸せを見つけるんだ」です。この考え方は、童話「青い鳥」にも通じるのではないでしょうか。 ぜひ、「自分の人生をコントロールできる感覚」をつかむ参考にしてください。
心理カウンセラー・心理セラピスト 佐藤城人(さとう・しろと)
心理カウンセラー・心理セラピスト。過去にアルコール依存症を患った経験があり、それを克服する過程で40代に再度大学に入学、心理学と出会う。各種依存症やインナーチャイルドを抱える方、さらには社交不安障害や愛着障害の悩みなど、これまで10年間で約5000名様の悩みをサポート。インナーチャイルドの回復プログラムの中で「正しさよりも心地よい生き方」を提唱する。2019(令和元)年一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会を設立。現在はカウンセラー・セラピストの養成にも力を入れている。
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