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水原容疑者「もうおしまいだ」賭博報道で明かされる数々のウソ…“依存症者”はなぜすぐバレるウソをつくのか?心理カウンセラーが解説

2024.4.15 佐藤城人(さとう・しろと)

大リーグで大活躍の大谷翔平選手の元通訳・水原一平氏の賭博に関する報道で、次々と、その手口や経緯が明るみになってきました。報道から、「依存症者=嘘(ウソ)つき」というイメージをお持ちになった方も多いのではないでしょうか。本当に依存症者はウソつきなのでしょうか。心理カウンセラーが解説します。

はじめに

依存症者は、自分自身にもウソをついている?依存症者は、自分自身にもウソをついている?

 大リーグで大活躍の大谷翔平選手の元通訳・水原一平氏の賭博に関する報道で、次々と、その手口や経緯が明るみになってきました。大谷選手の口座からの送金額が、当初は約6億円といわれていました(3月のニュース報道)が、実際には24.5億円と判明、賭けの負債額も62億円と判明しました。また、水原氏については、これまで発言が二転三転し、さらに学歴詐称の疑いなどもかけられています。このようなことから、「依存症者=嘘(ウソ)つき」というイメージをお持ちになった方も多いのではないでしょうか。本当に依存症者はウソつきなのでしょうか。

 結論を述べれば、依存症者はウソをつくことが多いです。私は元アルコール依存症者です。昔、酒に飲まれていたころは、「酒をやめる」と言いつつ、なかなかやめることができませんでした。また、家族に隠れて酒を飲んだことがバレた場面、とっさに出る言葉は「飲んでない」でした。これらは、まさにウソをついていると言えますよね。つまり、依存症であり続けるためには、ウソをつく必要があるともいえます。ギャンブルにはまる人たちも、他の依存症も似たり寄ったりではないでしょうか。

 そして、このウソは明らかにウソとわかるものが多いです。従って、誰もがわかるようなウソをつきはじめたら、その人は依存症かもしれません。このように考えることができたら、早期発見も可能ではないでしょうか?早期発見が難しいことは後述します。

 ウソをつくことは、もちろん良くないことです。法律に違反した場合、キチンと罪を償う必要があります。また、周囲の人を巻き込み傷つけた場合、信頼関係を修復する必要もあります。昔、私がアルコールに溺れていたときは「酒さえやめればいいんだ」と口にしていました。しかし、実際にはそんな簡単なことではありません。やめてからの方が、道のりは長いです。

私は断酒して25年経ちます。これはウソではありません。今振り返ると依存症だったころは、自分自身に対しても、ウソをつく生き方をしていました。それが嫌で現実を直視しなかったのでしょう。この記事が、依存症に悩むご本人やそのご家族の方々への、参考になれば幸いです。

依存症は「否認の病」

「自分は依存症ではない」と思い込む「自分は依存症ではない」と思い込む

 依存症は「否認の病」と言われます。たとえ医師から依存症と診断を受けたとしても、「自分は違うと否認し、ただのギャンブル好きなだけだ」と、自分自身に言い聞かせようとします。また、依存症に陥ってしまうと、ギャンブルならギャンブル。薬物なら薬物、などのように、依存する対象しか目に入らなくなります。これは、かなり視野が狭い状態です。その結果、周囲から見れば簡単に見抜けるようなウソであっても、本人は「バレていないはず」と思い込むところがあります。ウソには、次の3つのタイプがあります。

・防御のためのウソ:自分を守るためや友人・家族を守るためのウソ。依存症者の場合、家族ではなく、ほぼ自分自身の保身のためといえます。例えば、内緒でギャンブルをしていたことがバレた場合、「やってない」と言い張ります。

・大きく見せるためのウソ:見栄を張るためのウソ。ギャンブル依存であれば、お金が無いにもかかわらず、返済できるとか、スポンサーが付いているなどのウソをつきます。

・だますためのウソ:陥れるためのウソ。お金を借りる目的がギャンブルの掛け金にもかかわらず、事業の融資などのようにウソをつくこと。場合によっては犯罪にも発展します。

「否認の病」とお伝えしました。「自分は依存症ではない」という思考そのものがウソになります。そして、具体的には、自分を防御するため、大きく見せるため、周囲や自分自身をだますために、ウソを重ねることになります。

 依存症者は自分自身にもウソをつきます。例えば、ギャンブル依存であれば、「次に勝てば借金は無くなる。だから、俺には負債はない」と考えるのだとしたら?また、アルコールであれば、明日が入院日とわかっていながら、「これが最後の一本」と言って飲みたがります。入院するのだから、「今日からもう飲まない」と決心すれば良いのですが、これがなかなかできません。

 依存症に陥ると、どこか自分や周囲に対して、だましながら生きるようになります。ただし、ウソやだますのは性格や人格に問題があるからではありません。あくまでも病気がそのような言動を取らせます。従って、病気から回復すると、これらの誤った考え方や言動から解放されます。

次ページ……もしかして依存症?ただのギャンブル好きとの違いは?

心理カウンセラー・心理セラピスト 佐藤城人(さとう・しろと)

心理カウンセラー・心理セラピスト。過去にアルコール依存症を患った経験があり、それを克服する過程で40代に再度大学に入学、心理学と出会う。各種依存症やインナーチャイルドを抱える方、さらには社交不安障害や愛着障害の悩みなど、これまで10年間で約5000名様の悩みをサポート。インナーチャイルドの回復プログラムの中で「正しさよりも心地よい生き方」を提唱する。2019(令和元)年一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会を設立。現在はカウンセラー・セラピストの養成にも力を入れている。

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