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【家庭内トラブル】「人の荷物を勝手に開ける」は法律違反?家族でもNG?弁護士が解説

2024.3.22 LASISA編集部

信書については「信書開封罪」にあたることも

人の荷物の開封は法に触れる可能性もある?人の荷物の開封は法に触れる可能性もある?

Q.他人宛の荷物の開封行為が罪に問われる場合はありますか?

菅野先生「送付物が『信書』の場合は罪になることがあります。

我が国の刑法では、他人の荷物等の開封について、特に『信書』に関して、133条で『正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。』と信書開封罪を定めています。

そのため、他人宛ての信書を正当な理由なく開封すれば、それは罪に当たる行為となります。この信書開封罪は、文字どおり『信書』を対象としています。『信書』とは、特定人から特定人に対し、自己の意思を伝達する文書等を指しており、個人に宛てた手紙などはもちろん、契約書、請求書なども広く含みます。ただし、郵便小包や写真などは、送付物自体だけでは意思を伝達する文章に当たらないため、信書から除かれます。

また、本罪は、信書の秘密を保護し、受発信者のプライバシー確保に資するものであるため、カタログなど、特定の受信者に向けて送付されるようなものでない場合も、信書には該当しません。

加えて、本罪は、『封をしてある』信書である必要があるため、信書の内容が外部から明らかにならないよう何らかの措置がなされている必要があります。わかりやすいものでは糊付けされた封筒に手紙を入れることなどがあげられるでしょう。この観点から、普通ハガキなども信書から除外されるといえます。

そして、本罪に該当する場合は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処される可能性があります。ただし、本罪は親告罪であるため、被害者(受発信者双方が該当します。)からの告訴がなければ処罰の対象とはなりません」

Q.信書開封罪は、開封するのが家族であっても罪になるのでしょうか?

菅野先生「例えば、窃盗罪などの場合は、刑法244条において、一定の親族間について刑を免除するなどの規定がありますが、信書開封罪にはそのような例外規定はありません。そのため、家族であっても信書開封罪に該当する可能性があります

ただし、本罪が成立するのは、正当な理由なく封をしてある信書を開封した場合に限られます。正当な理由がある場合とは、法令上信書の開封が認められている場合や本人が承諾しているときなどがあげられます。本人の承諾があるか否かというのは、単に明示的に承諾している場合だけではなく、当事者の関係性やその時の個別具体的な状況に照らして、本人が拒否しないであろうという推定的な承諾も含みます。

そのため、夫婦などの場合で、どちらかが普段から家計を管理し、これに異議が述べられていない場合、夫婦の一方宛てに届いた請求書を、家計を管理している他方の側が開封しているとしても、そのことから直ちに本罪が成立することにはならないでしょう。

また、親子間で、子どもが未成年者の場合などは、その監督が行き過ぎることがない限りは、監護教育や財産管理に必要な親権の行使として許容されるといっていいと思います(民法820条、同824条)」

Q.改めて「信書」とは具体的にどのようなものでしょうか。使用シーンを教えてください。

菅野先生「『信書』は、特定人から特定人に対し、自己の意思を伝達する文書等を指しております。個人に宛てた手紙などはもちろん、契約書、請求書なども広く含んでおり、小包や写真などは、送付物自体だけで意思を伝達する文章に当たらないため、信書からは除かれます。そのため、このような場合だから信書という手段を使うというよりも、郵便物や送付物などの中に、信書と分類されるものがあるというイメージの方が正確かもしれません。

なお、信書の開封ではなく、信書をそのまま隠し持ったりする行為などは、信書隠匿罪(刑法263条)、文書の毀棄を伴う場合は、文書毀棄罪(刑法258条、同259条)がそれぞれ成立します」

Q.実際に信書の「開封」行為が罪になった事例はありますか?

菅野先生「信書開封罪そのものが問われている裁判例はあまり多くありません。これは本罪が親告罪であり、告訴がなければ処罰されないことに理由があると思われます。

また、本罪は故意犯であり、過失による信書の開封を処罰していません。そのため、誤配送があったような場合で、それに気づかず開封してしまったような場合は罪になりません

信書を無断で開封してしまう場合の中には、このように誤って開封してしまったという事例も少なくないであろうことから、具体的な事例の集積が必ずしも十分ではないのだろうと思われます」

次のページ……信書以外の荷物に法的責任はないの?

弁護士 菅野正太(かんの・しょうた)

上智大学法学部法律学科卒業。早稲田大学大学院法務研究科卒業。中小企業法務、不動産取引法務、寺社法務を専門とする弁護士法人永総合法律事務所の勤務弁護士。第二東京弁護士会仲裁センター委員、同子どもの権利委員会委員。

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