花粉症はなぜ発症するの?発症しない人とする人の違いは(医師解説)
2024.2.21 LASISA編集部
「第一三共ヘルスケア」(東京都中央区)が、全国47都道府県を対象に、「花粉症に関する全国調査」を実施しました。
花粉症はなぜ発症する?“シーソー理論”とは
花粉症を発症するメカニズムとして、“コップ理論”が有名です。
コップ理論とは、花粉が体内に入り込むと抗体がどんどん蓄積され、一定量を超えると溢れ出すようにアレルギー反応が起こるというものです。さらに、シーソー理論という考え方にも注目が集まっているそうです。「ハピコワクリニック五反田」院長の岸本久美子先生が、「花粉症に対する正しい理解と対処法」を解説しました。
岸本先生「異物が体に入ってきたときに抗体を作って排除するという体が元々持つ防衛機能を「免疫」といいます。異物として入ってきた花粉を排除しようと過度に攻撃することで、体にさまざまな症状が起こり、花粉症を発症するのです。花粉症といえば“コップ理論”が有名ですが、他にも複数のメカニズムが関わっているといわれており、中でも最近有名なのが“シーソー理論”です。免疫力のバランスをシーソーの原理に例えたもので、細菌やウイルスに対抗する免疫力よりも、花粉などのアレルギーに対抗する免疫力の負担が大きくなることで2つの免疫のバランスが崩れ、アレルギー症状が引き起こされてしまいます」
花粉症になる人とならない人の違い
花粉症にならない人と花粉症になる人に違いはあるのでしょうか。
岸本先生「花粉症になる人とならない人の違いは、元々の『遺伝的な要因』と『環境要因』の違いの2つが挙げられます。遺伝的な要因では、アレルギー体質が強い人は花粉症に限らず様々なアレルギーを引き起こしやすいといえます。また、環境要因では、住んでいる地域・家の中の環境によって花粉に接する機会が多いほど、発症の可能性が高くなります。さらに、幼少期に発症したアレルギー症状を放置するとどんどん進行して、結果的に花粉症や気管支喘息などの症状につながってしまうこともあります。アレルギー対処のリテラシーを高くもち、小さい頃からスキンケアなどを徹底することで、他のアレルギー疾患の発症を比較的抑えることができるといえます」
都会は花粉症を発症しやすい?
なぜスギの量が多くない地域で花粉症を発症するのでしょうか。
岸本先生「環境はとても重要です。花粉の粒子は通常30μmで比較的大きいのですが、それが割れることにより、中からたんぱく質などの強い成分が放出されて、症状も強くなってしまいます。特にスギの花粉は割れやすい特徴があるため、今回の調査でも明らかになっているとおり、スギの量は多くないものの花粉症の発症率が比較的高い東海・関東地方のように、都会でアスファルト量が多いと考えられるエリアだと、花粉が地面に落ちて割れやすく、さらに風で舞いやすいのです」
睡眠不足や薬の過剰服用…花粉症によるパフォーマンスの低下が日常生活に与える影響
花粉症は日常生活に大きく影響しています。なかでも勉強や仕事などのパフォーマンス低下は深刻です。
「第一三共ヘルスケア」(東京都中央区)が、2023年12月、全国20~60代の男女4700人を対象に「花粉症に関する全国調査」では、花粉症によるパフォーマンスの低下を引き起こす要因として、最も多い回答は「集中力が低下する」(69.1%)でした。次いで、花粉症状の中でも代表的な「鼻水や咳が気になる」(50%)や「鼻水をかむ時間を取られる」(46.9%)といった要因があがりました。
さらに、つらい症状やそれを要因としたパフォーマンスの低下など、あらゆる影響をもたらす花粉症によって、「会社や学校に行きたくないと感じたことがある(とてもある+まあある)」と回答した人は、半数(50.2%)に上る結果となりました
花粉症がもたらすさまざまな症状が、集中すべきタイミングで障害となり、パフォーマンスの度合いに大きく影響してしまっていることが分かります。
岸本先生「花粉症の症状の中でも、意外にも相談を多く受けるお悩みは、“睡眠不足による日中のパフォーマンスの低下”です。家の中に持ち込まれた花粉によってい鼻づまりが起こり、呼吸がしにくく睡眠に影響が出ることもあります。特に子どもは、寝不足に気づけないため、日中、過度に興奮したり逆におとなしくなったり、一見花粉症とは関係なさそうな行動を引き起こし、ADHDと勘違いされてしまうような事態もあり得ます。他にも、花粉症でない人に症状のつらさを理解してもらえなかったり、風邪などと間違われたりする、また運転などへの影響を懸念して正しい薬の量を飲まずに悪化してしまうなど、日常生活への影響も大きいといえます」
recommend
こちらもおすすめ