「SNS」規約通りに使っていたのに「凍結」! 申し立てても解除されない 運営会社を訴えたら認められる?
2023.7.20 LASISA編集部
規約を守って使っていたSNSのアカウントが、ある日突然「凍結」措置を受けた。異議を申し立てても凍結が解除されない――。運営会社を訴えることはできるのでしょうか。弁護士に聞きました。
2023年7月初旬、ツイッターでは一時閲覧制限が導入され、ユーザーたちが大混乱となりました。今やSNSは日常のコミュニケーションに欠かせないツールとなっていますが、規約を守って使用していたにもかかわらず突然「凍結」の措置を受け、アカウントが使えなくなってしまうケースもあるようです。中には、運営側に意義を申し立てても解除されないという人も。この場合、ユーザーはどうすればよいのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
費用面・コミュニケーション面で困難か
Q.SNSでいわれのない「凍結」をされてしまい、異議を申し立てても満足な回答を得られない場合、ずばりユーザーは運営会社側を訴えることはできるのでしょうか?
牧野さん「利用規約違反で凍結されたのでなければ、理由なく「凍結」された場合には、運営会社側は契約違反となるため、訴えることはできます。しかし、ツイッターの利用規約では……。
『本規約およびユーザーと当社の間に発生する紛争には、準拠法の選択に関する規定を除き、カリフォルニア州法が適用されます。本規約または本サービスに係るあらゆる紛争は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ郡に所在する連邦裁判所または州裁判所に専属的に提起されるものとし、ユーザーは、人的管轄権に同意し、法廷地の不都合についての抗弁を放棄するものとします』
とあるため、日本の居住者でもカリフォルニアの裁判所で裁判を行うという不合理な条件を強いられることになります。そうなると、現実にカリフォルニアの裁判所で裁判を行うことは費用面、言語面で難しいでしょう」
Q.一民間企業が無料で提供している一サービスの場合、ユーザーの異議申し立ては、基本的にどの程度受け入れられるものなのでしょうか?
牧野さん「契約で合意されたサービスを提供していなければ契約上の義務の不履行となり、無料であっても契約上の権利は主張できると思いますが、裁判所に認められたとしても少額の賠償と思われます」
Q.そのような凍結をされたのが利用料を支払っている有料会員だった場合、無料会員と比べて異議申し立ての強度は違うものになりますか?
牧野さん「契約で合意されたサービスを提供していなければ、運営会社側は契約上の義務の不履行となり、無料か、有料かで異議申し立ての強度が変わることは基本ありませんが、有料の場合には契約解除して会費を返金することを請求できますので、損害賠償は無料会員よりも大きな金額を期待できるでしょう」
1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。
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