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「欲望の塊」「わがままな肉球」…カラーコスメ「独特なネーミング」が増えたワケ 大手メーカー狙う“ヒットの方程式”

2023.6.27 LASISA編集部

近年、独特な名前を冠したカラーコスメアイテムが増えているのをご存じですか。そこにはどのような狙いがあるのでしょう。各メーカーの担当者を取材しました。

「欲望の塊」って、何色のリップ?

(左から)Viseeネンマクフェイク ルージュ「RO650 チェリーの自惚れ」、KATEリップモンスター「01 欲望の塊」、Viseeネンマクフェイク ルージュ「BR350 林檎の口づけ」、KATEリップモンスター「12 誓いのルビー」(左から)Viseeネンマクフェイク ルージュ「RO650 チェリーの自惚れ」、KATEリップモンスター「01 欲望の塊」、Viseeネンマクフェイク ルージュ「BR350 林檎の口づけ」、KATEリップモンスター「12 誓いのルビー」

 「欲望の塊」「2:00AM」「わがままな肉球」「チェリーの自惚(うぬぼ)れ」――。これらの名称、実は全てメイクアイテムの色別の名称なんです。近年、このように一風変わった名前を冠したカラーコスメを多く見掛けるようになりました。それらの多くは、品薄を起こすほどの人気ぶり。独特のネーミングにはどんな狙いがあるのか? なぜ今次々と登場しているのか? 各メーカーに話を聞き、開発の舞台裏と“ヒットの必然”を探りました。

ヴィセの新作、軒並み売り切れ

 東京都内の主要駅周辺。立ち並ぶドラッグストアの各売り場で、軒並み「欠品中」の札が貼られた口紅があります。コーセーのコスメブランド「Visee(ヴィセ)」が2023年5月16日(火)に発売した「ネンマクフェイク ルージュ」です。

 唇の内側にある粘膜のような色と質感で血色感や色気を引き立てるというコンセプトのシリーズですが、まず目にとまるのは全6色それぞれに付けられた独特のネーミング。

「うさぎの恋人」「わがままな肉球」「海星(ヒトデ)の恋心」「チェリーの自惚れ」「林檎(りんご)の口づけ」「金魚の恥らい」。口紅として一般的な、ピンクベージュやワインレッドといったベーシックなカラー名とは一線を画しています。

 ツイッターやインスタグラムなどでは、発表直後から大いに話題になり「名前がまじでかわい過ぎる」「名前買いした!」「色もいいけど色名も好き」といった投稿が相次ぎました。

1.まずは興味を持ってもらうため

Visee「ネンマクフェイク ルージュ」Visee「ネンマクフェイク ルージュ」

 ヴィセの企画担当・藤田麻友香さんによると、ネンマクフェイク ルージュは、発売直後にして出荷個数実績が当初計画の約150%を記録し、通販サイト「Amazon(アマゾン)」では、同ブランド初となるビューティーカテゴリー1位を獲得しました。

 ネーミングは商品の売れ行きに大きく影響した、と藤田さんは分析します。

 粘膜カラーというコンセプトをそのままシリーズ名にしたこと。さらに、各色に粘膜感や色気を感じさせる“情緒的”な言葉を入れ込んだこと。「ベーシックな色名では(消費者が)買いたいと思うための後押しが十分ではありません。独特な名前でまずは興味を持ってもらい、そこから実際に購入してもらえる導線づくりを意識しました」(藤田さん)

2.SNSでの拡散、ヒットを後押し

 先述の通り、発表直後から大きな反響を呼んだネンマクフェイク ルージュ。SNSの各投稿では、通常なら色番号で識別されるリップアイテムがわざわざ色名で書かれているのが特徴的です。こうした反響もまた、メーカー側にとって大きな狙いの一つでした。

 その情報を誰かに共有したくなり、SNSにつぶやく。そのつぶやきが拡散されて、新たな購入者を生み出す――。SNSを介したこのようなサイクルは、現代においてもはやヒットのための必須条件とも言えそうです。

3.良い製品でなければ売れ続けない

 一方、当然ながら名前のインパクトだけでは大ヒットにはつながりません。

「実際に使った方からは、血色感やツヤ感、色持ちに対する評価をいただいています。良い製品だからこそ、予想以上の売り上げにつながっているのだと考えています」と藤田さん。

 あくまで手に取ってもらうためのきっかけとして、ネーミングがうまく機能したものと捉えているそうです。

4.鮮烈な先例、ケイトの「リプモン」

KATE「リップモンスター」KATE「リップモンスター」

 このように、ネーミングのインパクトがSNSなどで話題となり大ヒットにつながった先例が、2年前にありました。近年の“独特ネームコスメ”の先駆けとも言える、カネボウ化粧品のブランド「KATE(ケイト)」の「リップモンスター」です。

 絶妙な赤ピンク色の口紅が欲しいという欲望に応えるピンクレッドの「欲望の塊」、不気味なダークナイトをイメージしたディープレッドの「2:00AM」など、モンスター世界を舞台にしたストーリー性のあるカラー名が話題をさらい、「日経トレンディ」が毎年発表する「2021年ヒット商品ベスト30」にも入選しました。

 発売から2年をへた2023年4月末時点で、シリーズの累計売上は1300万本を突破。ケイトPR担当の若井麻衣さんは「色名が注目されている時期もありましたが、それだけでは2年間も好調な売り上げは続かないはず」と、商品の性能を自負します。

 リップモンスターもまさに「SNSでの“バズり”を狙った」(若井さん)アイテムでしたが、色の落ちにくさやツヤ感が評判となり、その後発売しているシリーズ商品はいずれも好調な売り上げを記録し続けています。

5.独特ネームはこれからも増える?

 独特なネーミングのカラーコスメは今後も増える傾向にありそうです。

 ケイトにはリップモンスターの他にも、各色に「繊細さを愛して」「意味のない事なんてない」などキャッチーな名を付けた全108色展開の単色アイシャドウ「ザ アイカラー」があり、こちらも好評を得ています。

 ネンマクフェイク ルージュが初めての独特ネーム展開だったヴィセも、同シリーズの新色や限定色を発売していくだけでなく、口紅以外のカラーアイテムにも同様の施策を広げていきたいと話しています。

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