1000万円より大切なものとは？「ウェディングウォーズ」（最終回）婚前合宿の果てに見えた“ふたりで生きる”覚悟

2025.6.24 北村有

ABEMAの恋愛リアリティショー「ウェディングウォーズ」（最終回）を振り返る！さまざまな問題と向き合い、結婚資金1000万円を手にしたカップルは……。

ひろむが悟った真実と成長

※ネタバレあり※

　恋愛リアリティショーといえば、トキメキやときには嫉妬、華やかな恋の駆け引きを楽しむもの。だが「ウェディングウォーズ」は違った。ただ好きなだけでは続かない、結婚という現実に向き合う新感覚の婚活サバイバル番組である。

　舞台は元・校舎。そこで8組のカップルたちが、結婚資金1000万円をかけ、さまざまな課題やゲームに挑んできた。参加者の関係性はまさに“婚前”。

　価値観の違いや生活のリアル、家族との関係までがあらわになる環境で、果たして「結婚にふさわしい」2人とは誰なのかを、視聴者も当事者のように考えさせられた。そんな「ウェディングウォーズ」の最終回は、感情のうねりと、静かに滲む愛情の強さが交錯する濃密な回となった。

　最終回直前の7話では、ひろむ（29）とみずほ（29）のカップルが注目を集めた。

　彼らはすでに同棲しており、みずほの実家で一緒に暮らしている。ただし、みずほの母とひろむの関係はうまくいっていなかった。「愛するって、見ることだよ」と母が静かに投げた言葉は、どこかひろむの胸には届かず、宙に浮いてしまっているようにも見える。

　だがみずほは、「母と仲良くしてほしい」と告げる。彼女の言葉に背中を押されたひろむは、「環境を変えるのではなく、自分の接し方を変えることで何かが変わるかもしれない」と思い至る。パートナーの親との距離感――結婚における大きな壁の一つとどう向き合うか。ここでふたりは、大きな一歩を踏み出しかけていた。

　しかし、続く脱落ゲーム「おはじき飛ばし」で、無情にもひろむ＆みずほカップルは敗退。「もっと一緒にいたかった」とひろむは涙を流したが、ゲームの最後で横並びにそろったおはじきが、これからの2人の歩調を象徴しているようにも見えた。

　最終回では、大野くん（28）＆かおこ（27）、セバス（32）＆サユリ（30）、ハトミ（28）＆さやか（26）の3組が、最後の課題「結婚資金レース」に挑んだ。男女で計20キロの重りを運び、山道と舗装路を使ってゴールを目指す過酷なレースだ。

　大野くんは、15キロを自ら担いで平坦な道を選び、かおこに5キロの重りと険しい山道を託す作戦を立てた。ところが、15キロの重さは想像以上。しかも、かおこが途中でトランシーバーを落としてしまい、連携がとれなくなるハプニングまで発生する。

　一方、ハトミとさやかカップルにも試練が。ハトミのアタッシュケースが途中で壊れてしまい、思うように荷物を運べない。それでも2人は、互いに息を切らしながらゴールへと辿り着いた。

　唯一安定して走りきったのが、セバスとサユリのカップルだった。夫婦のように息の合った動きと、冷静な判断で1位フィニッシュ。しかし、最終戦には過去の成績に応じた“ハンデ”があり、結果は思わぬ形で覆ることになる。

　繰り上げで結婚資金1000万円を手にしたのは、ハトミとさやかのカップル。スキンシップに対する価値観のズレに悩み、何度も衝突してきた2人だったが、ともに苦しみを乗り越えた先に、ようやくたどり着いた“勝利”だった。

　この番組のおもしろさは、単なる勝ち負けではない。「結婚」とは何かを、あらゆる角度から見せてくれる点にある。日常の些細な違和感、相手の家族との距離感、重すぎる荷物を抱える日々。それらに真摯に向き合うカップルたちの覚悟が、番組を通じて浮かび上がっていた。

　かおこが大野に対して語った言葉が思い出される。「大野くんが怪我をしたら消毒液になるし、戦うなら鎧になる」。この一言に、結婚の本質が凝縮されていた。

　結婚とは、相手の弱さや未熟さも引き受け、その存在ごと肯定すること。ときには自分が相手の代わりに戦い、支える覚悟を持つこと。「理想の相手」を探す旅ではなく、「この人と一緒にいる未来を選び続ける」こと。それがこの番組が提示した、真の“パートナーシップ”の姿だった。

ライター。2019年に独立。主に映画やドラマ関連のレビューやコラム、インタビュー記事を担当。主な執筆媒体はtelling, / ぴあWeb / CYZO ONLINE / TRILL / LASISAなど。映画館と純喫茶が好き。