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“人生のパートナー”に選ばれやすい女性像とは…「バチェラー・ジャパン」シーズン6(最終回)“完璧すぎる”バチェラーが下した決断

2025.6.24 北村有

「バチェラー・ジャパン」シーズン6(最終回)を考察! ついにマレーシアの旅が幕を閉じる、バチェラー・久次米一輝が下した運命の相手は……!?

2人の間で揺れた最終局面のゆくえ

(C)2025 Warner Bros. International Television Production Limited. All Rights Reserved(C)2025 Warner Bros. International Television Production Limited. All Rights Reserved

※ネタバレあり※

 Prime Video「バチェラー・ジャパン」シーズン6が幕を閉じた。舞台はマレーシア、バチェラーは30歳の美容外科医・久次米一輝。シリーズ最年少にして、容姿・学歴・キャリア・育ちのすべてを兼ね備えた“完璧バチェラー”の登場に、放送開始前から注目が集まっていた。そんな彼が最終的に選んだのは……? 正直、SNS上では少々批判的なコメントも見られた。だが、この旅を通じて浮かび上がったのは、“人生のパートナーとして選ばれやすい女性像”とは何かという、根本的な問いだったのかもしれない。

 最終話で残ったのは、小田美夢と石森美月季の二人。小田は24歳で、明るくかわいらしい“みんなの妹”タイプ。石森は27歳、物腰柔らかな落ち着いた雰囲気で、久次米とは過去にパーティで顔を合わせたこともある顔見知りの立場だ。

 番組が進行するにつれ、この二人が久次米の心を大きく動かしていくのがわかった。視聴者の間でも予想が二分しており、最後までどちらが選ばれてもおかしくなかったように見える。

 しかし、ファイナルローズを手にしたのは石森だった。

 久次米は両者と真剣に向き合い、誠実に接していたように見える。しかし、あえて言葉を選ばずに言うのなら、最初から石森に対して「二人でいる日常のシーンを想像しやすい」確信めいたものを抱いていたのではないか。

 ローズセレモニー後、参加女性たち全員が涙を流すなか、久次米が率先してハンカチを差し出していたのが石森だったというエピソードもあり、久次米のなかではすでに心の温度が定まっていたようにも思える。

選ばれなかったのはなぜ?

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 小田美夢の旅は、最終的には選ばれなかったという結末を迎えた。しかし、彼女がこの旅のなかで見せた変化と成長は、多くの視聴者の心を打ったはずだ。

 当初は「7秒見つめ合う」「背中に文字を書く」「指相撲」などの遊びを通じて久次米との距離を縮めようとしていた小田。初めてのツーショットデートにおいて、自身の家族背景や過去の恋愛経験について語ったことで、空気が一変した。

 その後も「うれしい以上の言葉が欲しい」「もう悔し涙は流さない」といった小田の言葉からは、自身の感情を言語化し、相手に伝える力が磨かれていった様子が伺える。彼女の物語は、恋愛リアリティの文脈において“選ばれなかったけれど、もっとも支持を得た女性”として、記憶に残る存在になるのではないだろうか。

 石森が選ばれた背景には、久次米が理想とする「静けさと穏やかさ」を備えていた点が大きいと考えられる。番組中、久次米は「家庭を持つこと」を真剣に捉えており、そのために女性たちに将来の生活や家族観について、たびたび問いかけていた。

 石森はその問いに、過度に感情的になることなく、しかし表情や言葉の端々から確かな信頼感をにじませて答えていた。そして最後に「100%信じている」と語ったときの表情には、彼女の覚悟が宿っていた。

 キスのシーンをめぐっては、久次米が両者に口づけを交わしたことがやや物議を醸したように思えるが、石森とのキスの前に彼女が「なんで迷っているの?」と問いかけたシーンからは、久次米のなかに微かな葛藤……つまり“もう一人にもキスしてしまった後ろめたさ”のようなものがあったようにも受け取れてしまう。

バチェラーという装置と、視聴者が見ているもの

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 では、恋愛リアリティという番組構造のなかで、どんな女性が“人生のパートナー”として選ばれるのか。ここにはいくつかの傾向がある。

 まずひとつは「柔らかさ」と「懐の深さ」だろう。小田や石森に共通するのは、相手の言葉を遮らず、かつ自身の感情もなめらかに表現できる点。そしてもうひとつは、懐柔されやすさともとられかねない、「相手のペースに自然と合わせることができる」という特性だ。

 たとえば、参加女性のなかで人気が高かった加藤紀穂や辻本菜々子、西川歩希らは、自我の強さや個性が際立っていた。しかし、最終的に残ったのは、ふんわりと相手に寄り添うタイプの女性だった。これは決して偶然ではない。“完璧すぎるバチェラー”久次米にとって、対等な相手よりも、穏やかに自分を支えてくれる存在のほうが安心を感じられたのかもしれない。

 SNSでは、今回の結果を受けて辛辣な声もある。だがその一方で、久次米が「その場の感情に流されず、最後まで地に足をつけて選んだ」という評価も根強い。

 つまり「バチェラー」という番組が用意した非日常的な舞台で、最終的に久次米が選んだのは「日常のリアルな風景」を想起させる石森だった、という事実が、この物語の核心を突いている。

 恋愛とは、非日常のなかで燃え続けるものではなく、日々の繰り返しのなかで育まれるもの。だからこそ、久次米が最終的に下した選択は、物語の終わりとして正解だったのかもしれない。

 恋愛リアリティ番組の最終回は、誰が選ばれたかという結果に目が行きがちだ。しかし、そこに至るまでの過程……言葉を重ね、距離を縮め、感情を確かめ合っていく一つひとつのやりとりこそが、その人の「人生の選び方」を物語っている。

「バチェラー・ジャパン」シーズン6は、久次米一輝というバチェラーを通じて、「どんな女性が選ばれるのか」「どんな関係性を人は求めるのか」を問いかける作品だった。そしてその答えは、見ていた私たち一人ひとりのなかにあると思えてならない。

「バチェラー・ジャパン」シーズン6(概要)

「バチェラー・ジャパン」シーズン6はPrime Videoより独占配信中(全9話)
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0F8JK81MR/ref=atv_dp_season_select_s6

 北村有

ライター。2019年に独立。主に映画やドラマ関連のレビューやコラム、インタビュー記事を担当。主な執筆媒体はtelling, / ぴあWeb / CYZO ONLINE / TRILL / LASISAなど。映画館と純喫茶が好き。

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