情に流されない “完璧バチェラー”「バチェラー・ジャパン」シーズン6(5〜7話)、家族との相性がジャッジされる、シビアな決断の先に残った女性は…?
2025.6.19 北村有
「バチェラー・ジャパン」シーズン6(5〜7話)を考察! 次々と脱落者も出ていく中、最終枠まで残った女性たちは、ついにバチェラーの両親と対面することに…。
「将来が想像できるか」で選ばれる関係性

※ネタバレあり※
視線のやりとり、言葉の端々、沈黙の長さ。そのすべてを見逃さずに、相手のことを深く知ろうとする。それは、恋愛というより、診察に近いような丁寧さだった。Prime Video「バチェラー・ジャパン」シーズン6、バチェラーに選ばれた久次米一輝は、30歳の医師。誠実さと知性を兼ね備え、SNSでは“完璧バチェラー”と称されている。だが、5〜7話を通じて浮かび上がってきたのは、「完璧」であることの難しさと、その裏にある葛藤だった。
エピソード5で発表された新ルール「シンデレラローズ」は、久次米にとっての転機だった。深夜0時までともに過ごす特別な時間の果てに、バラを受け取れなければその場で脱落となるという、まさに“覚悟”のバラ。
西田祥子がそれを使ったとき、彼女は「ここからは愛の領域」と言った。けれど、久次米は「将来が想像できない」と語り、ローズを手渡さなかった。
同じ言葉が、黒澤楓や2on1で敗れた西川歩希にも向けられる。まるで、頭のなかに「家族との未来」というシミュレーションがあり、それにフィットする女性かどうかを確かめているようだった。それは「選ぶ」ために必要な視点かもしれないが、恋とは本来、もっと不確かで、もっと感覚的なものではないか? そう問いかけたくなる瞬間でもある。
6話で久次米は、石森美月季との朝日を眺めるヘリデートで、頬にそっとキスをした。だがその手にあったはずのローズは、彼女に渡されることはない。これはどう解釈すればいいのか。ロマンチックな時間を共有し、互いに心を開いていたようにも見えた。だが久次米はその場の雰囲気だけでは、もうローズを渡さない。
「好きだからローズを渡す」のではなく「本当に選びたいから渡す」。その姿勢は誠実ともいえるし、慎重すぎるともいえる。ローズをもらえた女性はうれしい。だが、見ている側には、誰か一人を選んで「恋が始まる」あの高揚感が、やや不足して感じられる。
むしろその都度、選ばれなかった側の女性たちの言葉や涙に、番組の重心があるかのようにすら見える。「本気の恋愛」の裏に、何人もの“傷つく覚悟”が置き去りになっているのだ。
残ったのは“好き”よりも“穏やかな関係性”をくれる人たち

7話では、残った3名の女性――小田美夢、石森美月季、辻本菜々子が久次米の両親に会う展開に。興味深いのは、まず女性たちが久次米の両親に会い、その後にバチェラー本人が彼女たちの家族に会うという流れだ。そこには、バチェラー側の「受け入れる姿勢」の真剣さと、家族という単位で相性を確かめようとする実直さがにじむ。
父の「好きだけじゃ結婚は乗り越えられない」という言葉、母の「(参加者女性たちの)年齢によって結婚に対する意識が違う」という視点もまた、番組の雰囲気に引き締まりを与えた。
両親がとくに注目していたのは、結婚を“自分ごと”として語っていた辻本のように見えたが、選ばれたのは石森と小田。この結果から、必ずしも久次米と視聴者の間で、結婚相手としての女性を選ぶ基準は一致していないように思えてならない。視聴者は感情移入し、応援したくなる人を“本命”と見なす。しかし久次米にとっては、そうとは限らないようだ。
結婚相手を「診る」バチェラーが問う、恋愛の定義

このバチェラーは、優しすぎるのだろうか。それとも、自分の心をちゃんと信じているからこそ、情に流されず判断できているのか。
7話までを観ていて感じたのは、久次米が恋愛リアリティ番組に登場した歴代バチェラーのなかで、もっとも「本質的に誠実な人間」かもしれないということ。けれど同時に、誠実であろうとすればするほど「好き」という言葉を軽く扱えないがゆえに、恋の加速はどこかでブレーキがかかってしまう。それは久次米が、恋というよりも本気で「人生のパートナー」を探しているからなのかもしれない。
石森と小田、2人のうちどちらが選ばれるのか。
この物語が向かう先は、恋のゴールインではなく「選んだことへの覚悟」なのかもしれない。完璧であろうとする人が、完璧ではいられなくなる瞬間。久次米が、自分自身の気持ちにどこまで向き合えるのか。それこそが「バチェラー・ジャパン」シーズン6のクライマックスにふさわしいテーマなのだと思う。
「バチェラー・ジャパン」シーズン6(概要)
「バチェラー・ジャパン」シーズン6はPrime Videoより独占配信中(全9話)
6月19日(木)20時 第8話-第9話
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0F8JK81MR/ref=atv_dp_season_select_s6
ライター。2019年に独立。主に映画やドラマ関連のレビューやコラム、インタビュー記事を担当。主な執筆媒体はtelling, / ぴあWeb / CYZO ONLINE / TRILL / LASISAなど。映画館と純喫茶が好き。
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