LASISA

Search

「こうやって支配の連鎖が始まっていくんだ」……ドラマ「子宮恋愛」が描く「支配」と「解放」の境界線とは?

2025.6.5 北村有

「子宮恋愛」7〜8話を振り返る。ついに、まきが夫との関係に終止符を打つ! そして新たな事実が発覚する。

モラハラ夫からの脱却

「子宮恋愛」(読売テレビ・日本テレビ系)「子宮恋愛」(読売テレビ・日本テレビ系)

 ドラマ「子宮恋愛」は、結婚生活のなかで自分を見失った女性が、新たな恋を通じて自分らしさを取り戻そうとする、衝撃的で切ない物語だ。とくに第7〜8話では、主人公の苫田まき(松井愛莉)が夫との関係に終止符を打ち、新たな人生へと踏み出す心情が繊細に描かれる。

 夫・恭一(沢村玲)との生活は、表面的には何不自由ないように見えるものの、その実態は精神的な束縛とモラハラに満ちていた。まきは長い間、「夫にすら本音が言えない」状態に悩んできたが、ついに「私は家政婦じゃない」と自身の感情をぶつけるまでに至る。しかし恭一はその訴えに対し、「家事はまきが好きでやっているんだから、感謝の見返りを求めるのはおかしい」と冷たく言い放つ。まきの尊厳を無視した恭一の態度に、視聴者は怒りを覚えると同時に、まきが新しい一歩を踏み出す勇気を感じ取ることになる。

 対照的に描かれるのが、山手旭(大貫勇輔)の存在だ。彼は常にまきの気持ちを気遣い、「いつまでいてもいい」と安心感を与える。夫の恭一とのあまりにも大きなギャップに、まきが心を惹かれていくのも当然だろう。夫婦間の感情の温度差が鮮明に描かれ、視聴者はまきの選択を自然と支持したくなる。

「便利な結婚」から「真の愛情」へ

 恭一はまきに対して執着を見せるが、その理由は愛情ではない。彼は浮気相手の寄島みゆみに本心を寄せているにも関わらず、なぜかまきとの離婚を拒否する。その理由は単純で、まきとの結婚生活が恭一にとって便利だからだ。彼にとっての結婚は、まるで便利な家電製品を選ぶようなものであった。その打算的な態度に対し、まきが感じるのは冷たい疎外感だけだ。

 一方、山手との時間は、まきに新たな喜びや安らぎをもたらす。「歩く場所も食べるものも、ずっと同じものを繰り返していた」と語るまきにとって、山手は常に新しい世界を見せてくれる存在だ。水族館デートのシーンでは、まきが心から山手との時間を楽しんでいる様子が伝わり、その表情からは新しい人生への期待が滲み出ている。

支配の連鎖か、それとも新たな始まりか? 妊娠発覚が示唆する未来

「子宮恋愛」(読売テレビ・日本テレビ系)「子宮恋愛」(読売テレビ・日本テレビ系)

 物語が新たな局面を迎えるのが、まきが子どもを妊娠した瞬間だ。これはまきが完全に夫・恭一から離れ、新しい人生を築こうとする決意の象徴とも言える。

 しかし、まきが妊娠したのは山手との子どもなのか、それとも恭一の子どもなのか? SNS上では、恭一がまきに対して向ける執着心も含め「こうやって支配の連鎖が始まるのでは?」という不安の声もあがっている。

 複数の女性と関係を持っていた山手の過去についても、まきにとってはまだ懸念材料の一つかもしれない。だが彼はいま、「苫田さん以外にはいない」とまきに真摯に伝えてくれている。視聴者は、この新しい関係性が過去の繰り返しではなく、真にお互いを尊重し合える愛になることを願わずにはいられない。

 第7〜8話では、まきが過去の支配的な関係から勇気を持って脱却し、自分らしい幸せを求めて動き出す姿が印象的だ。松井愛莉の繊細で力強い演技が、視聴者の共感を深く呼び起こしている。「子宮恋愛」は単なる不倫劇や恋愛ドラマを超え、自分の人生を取り戻すための闘いを描いた、胸に迫る物語となっている。

 読売テレビ・日本テレビ系「子宮恋愛」毎週木曜深夜0:59放送

【動画】「子宮恋愛」(7〜8話)予告

 北村有

ライター。2019年に独立。主に映画やドラマ関連のレビューやコラム、インタビュー記事を担当。主な執筆媒体はtelling, / ぴあWeb / CYZO ONLINE / TRILL / LASISAなど。映画館と純喫茶が好き。

tags

この記事の関連タグ

recommend

こちらもおすすめ