静かな熱狂を生んだ NHK「しあわせは食べて寝て待て」は、なぜ “傑作ドラマ” になったのか?
2025.5.31 ゆるま小林
NHKで放送されたドラマ「しあわせは食べて寝て待て」。多くの人の心を捉えた同作の魅力を振り返ります。
NHKプラスで歴代ドラマ1位に(朝ドラ、大河除く)

ドラマファンの間で絶大な人気をほこった「しあわせは食べて寝て待て」(NHK総合)が、ついに最終回を迎えました。水凪トリさんの漫画が原作となり、桜井ユキさん主演で「ドラマ10」枠にて放送された同作。第1話はNHKプラスの視聴数(同時または見逃し配信)にて、連続テレビ小説と大河ドラマを除くドラマの中で歴代1位を獲得する人気に。2025年5月27日(火)に最終話を迎えて以降、SNSでは大絶賛のコメントが数多く書き込まれています。
民放ドラマと比べると、出演者も演出も派手ではない「しあわせは食べて寝て待て」が、なぜここまで熱狂的なファンを生み出したのでしょうか? 同ドラマの魅力は、何気ない日常を丁寧に静かに描いたストーリーにあります。
38歳で独身の麦巻さとこが主人公ですが、一見するとどこにでもいる普通の女性。ただ、さとこは一生付き合う病気の膠原病(こうげんびょう)にかかり、健康だけでなく仕事や将来設計など、いろいろなものを突然なくすことになります。それまでキャリアウーマンとして夢があったのに、会社を退職して週4日のパートでギリギリの生活を送ることに。治療の成果があって日常生活は送れるものの、無理をするとすぐに体が悲鳴を上げる状態です。
さとこに襲いかかった静かな絶望は、ドラマを通じて最終回まで描かれます。その様子が見たことないほどリアルで、いつの間にか視聴者はさとこの生活の一部になったような没入感を得られます。
そんなさとこは、収入が減ったことで家賃の安い団地へ引越し。その団地で、加賀まりこさん演じる大家・美山鈴と、宮沢氷魚さん演じる薬膳料理が得意な羽白司と出会い、物語が展開します。とは言っても、新しい出会いが起きてもさとこの病気が治るわけでもなく、ラブストーリーが始まる気配もありません。ただ、司と出会ったことでさとこは旬の食材を取り入れた薬膳料理に出会い、少しずつ人生が好転していくことになります。
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