LASISA

Search

“男性疲れ”する時代「彼氏が嫌いなわけじゃない、でも…」女性用風俗“ジョフウ”が必要とされる理由

2025.4.26 北村有

“女性用風俗”を舞台にした新ドラマ「ジョフウ ~女性に××××って必要ですか?~」3〜4話の内容を振り返る! 女性用風俗を頼るのはどういった心情から……。

“恋”よりも“自尊心”が揺らぐとき、人はジョフウを頼る

「恋愛に疲れた」「誰かと一緒にいるのに孤独」――そう感じたことがある人にとって、ドラマ「ジョフウ ~女性に××××って必要ですか?~」(テレ東ほか)は、単なる深夜の“お色気枠”ではない。むしろ、現代を生きる女性たちの“自尊心の居場所”について丁寧に描こうとする、誠実なヒューマンドラマである。特に3〜4話では、ジョフウを利用する女性たちが何を求めているのか、その核心が少しずつ浮き彫りになってきた。

 4話に登場するのは、日々の生活で何かが“ズレている”と感じながらも、声に出してこなかったOLの保乃(中崎絵梨奈)。彼女には婚約者がいる。暴力を振るうわけでもなければ、浮気もしていない。だが、彼が悪い人じゃないからこそ、自分の心に巣食うモヤモヤを誰にも相談できずにいた。きっかけは、デリケートなことを公共の場で話したり、デリカシーに欠ける言動をしたりといった、細かな“ズレ”の積み重ねだった。「男って、なぜこうなんだろう?」という拭いきれない思い。それは個々の恋愛感情や性欲とは別の、“人間としての違和感”だ。

 そんな彼女が、最初はためらいながらもセラピストを指名する。派遣されてきたのは“パラディーソ”のNo.2セラピストのレン(笠谷朗)。癒しを求めるはずの場所で、彼女が手にしたのは“性的な快感”ではなく、“ただありのままの自分として扱われる”という感覚だった。

「ジョフウを使う女=欲望が強い女」と見なすのは、あまりに表層的だ。保乃が事前に出したリクエストは、「清潔感のある人をお願いします」。この一文だけで、彼女がどれほど“男性”という存在に慎重になっているかが伝わってくる。

 恋人に嫌気がさしたわけではない。でも、いまの彼との関係性では、自分の感性や存在そのものが無視されてしまう気がする。そんな宙ぶらりんな気持ちを抱えながら、彼女は自分と向き合おうとする。“誰かに大切にされたい”ではなく、“誰かに大切にされていると、自分が思えるか”。その感覚を取り戻すために、彼女は未知の扉を叩いたのだ。

“癒し”とは、誰かに見られている実感

 このドラマの魅力のひとつは、セラピストたちの描き方が非常にニュートラルである点だ。特にNo.2セラピストのレンは、“モテテク”や“口説き文句”とは無縁の存在。誰に対しても偏見を持たず、丁寧に目を合わせ、心から「人と向き合う」ことを徹底している。

 レンが放つ言葉は、どれも媚びがなく、やさしい。彼は保乃のネイルの色や室内に漂うアロマの香りを率直に褒めて、相手の趣味や選んだものに自然な興味を示す。これが、保乃にとって「恋人との関係にはない、対等な心のやり取り」だったのだ。

 4話では、保乃がレンと過ごす時間を通して、恋人との関係性を見直そうとする場面が印象的だった。レンは一切「いまの彼と別れたら?」などとは言わない。ただ、対話を重ねていくにつれ保乃が「もっと自分を大切にしていいのかも」と気づいていく。そのプロセスこそが、このドラマが描こうとしている“癒しの再定義”なのかもしれない。

 癒しとは、他者に触れたり甘えたりすることに限らない。むしろ、相手と安心して話せること。否定されないこと。見た目や役割ではなく“中身”をちゃんと見てもらえること。レンという存在は、それを穏やかに体現している。

「男性に疲れた」女性たちが求めるものは、特別なことではない

 本編で主人公のアカリ(山崎紘菜)が口にする「仕事してて借金してなくて……」という理想の恋人の条件は、「彼氏に求めるものは?」と問いを投げた先輩のミホ(久住小春)からも「ハードル低い!」と突っ込まれていた。しかし、その裏には“それすらかなわない現実”への絶望が透けて見える。

“普通”の優しさや気配りを求めると「理想が高すぎる」と笑われる世のなかで、女性たちはどうすれば自分を守れるのか? その答えのひとつとして、このドラマは「ジョフウ」という選択肢を提示しているのだ。

「ジョフウ」は、女性用風俗店の世界を舞台にしながら、その実、自己肯定と人間関係の在り方について描いた物語である。レンと保乃のやりとりは、恋愛ドラマではなく、自己回復の物語として観ることもできる。

「自分がどう思われるか」ではなく「自分がどうありたいか」。このドラマが伝えるメッセージは、意外と根源的で、誠実だ。見たことのない世界に思えるかもしれないが、その奥には、私たちの日常にも通じる“痛みと回復”のプロセスが詰まっている。

 そしてなにより「男性に疲れた」と思ったとき、癒しや希望をくれるのは、意外なほど“あたりまえの優しさ”だったのかもしれない。

 ドラマチューズ!「ジョフウ 〜女性に××××って必要ですか?〜」(テレ東ほか)毎週火曜深夜24:30放送

【動画】第5話の予告を見る!

●【予告】ジョフウ~女性に××××って必要ですか?~ 第5話

 北村有

ライター。2019年に独立。主に映画やドラマ関連のレビューやコラム、インタビュー記事を担当。主な執筆媒体はtelling, / ぴあWeb / CYZO ONLINE / TRILL / LASISAなど。映画館と純喫茶が好き。

tags

この記事の関連タグ

recommend

こちらもおすすめ